約 528,505 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/547.html
ゆっくりチルノの一日 紅魔館の前に広がる巨大な湖。 正確な大きさすら分からぬその湖畔には妖精からゆっくりまで、様々な生物が生息している。 それは生態系ピラミッドの下層に位置するゆっくりにとっては天敵も多いという事実を示しているが、 それでもやはり豊富な水や食料と言うのは捨て難い魅力らしく、ゆっくり達は日々危険にさらされながらも ゆっくりとした生活を送っていた。 そんなゆっくり達のうちの一匹、水色の髪に薄い色の羽、 氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝も狭い巣穴の中で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 近くには誰もいないのだが、そんなことは気にせずに伸びをする。 「ん~~~っ!」 さて、さっそく朝食を取ってこよう そう思ったゆっくりチルノは草むらに穴を掘っただけの小さい巣穴から元気よく飛び出す。 実は昨晩のうちに明日の朝食にしようと思って巣穴に木の実をいくらか蓄えていたのだが、 そんなことはもう忘れてしまったらしい。 まぁしょうがないよね!⑨だもの! 夏の暑い日差しもこんな朝早くは厳しさを感じさせない。 だが晴れ渡った青空はその日も暑い一日となることを告げていた。 そんな日差しの射す湖畔をぴょんぴょんととび跳ねるゆっくりチルノ。 しかし空腹に悩まされているその体はあまり元気がない。 「う~~………あたいってば腹ぺこね……」 誰にともなく呟きながら餌を探すゆっくりチルノ。 そもそも燃費の悪いゆっくりにおいて昨晩から何も食べていないのだから元気がないのは当然であった。 しかしどれだけ探しても餌となりそうな虫も花もなかなか見つからず、段々とその足取りは重くなっていく。 実際は探し方が悪いだけでそこら中に食べられる物はあったのだが、 ゆっくりの中でも極めつけの餡子脳、ゆっ⑨りブレインではそんなことは分かるはずもなかった。 あたいってばここで死ぬのかしら、とゆっくりチルノ空腹で朦朧とした意識で考え始めていたその時、 急に足場を踏み外して湖の近くの池とう(小さい池みたいなもの)に突っ込んでしまった。 「1+1=11!!?」 意味不明な⑨ソウルを叫んでぷかぷかと池とうに浮かぶゆっくりチルノ。 早く上がらなきゃ、と僅かに残った意識が警鐘を鳴らすが最早そこから脱出する力は残されていなかった。 頭の中に走馬灯が流れ始める。 記憶力が無いので1秒で終わった。 「ゆっくりした結果が⑨だよ……!」 ⑨なこととゆっくりしていたことはあまり関係ないのだが、 それはともかくそんなつぶやきとともにゆっくりチルノの意識は闇に沈んだ。 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆ~ゆ~♪ゆ~ゆゆ~♪」 何やら音痴な歌声が聞こえてきてゆっくりチルノは意識を取り戻した。 体は相変わらず池とうに突っ込んだままだが、先ほどと違って空腹は満たされ、体は元気に充ち溢れている。 「んっぷはっ!あたいってばゆっくりね!」 何で元気になったのかはよく分からないが、とにかく元気になって復活したのだ。 あたいってばひょっとして最強に運が良いのかもしれない。 と幸せ脳回路で考えたゆっくりチルノ元気いっぱいな叫び声とともに池とうから抜け出した。 実際は運が良いとか何か特別なことがあったとかいうわけではなく、 ただ単にゆっくりチルノの体が氷でできており、池とうにはまったことで体が勝手に水分を吸収して 回復しただけなのだが、そんな理屈は当の本人は知る由もなかった。 だって⑨だもの。 因みにゆっくりチルノの氷は微妙に糖分を含んでおり、溶かすと砂糖水になっておいしいらしい。 ここでなんで氷のくせに常温で溶けないんだとか、そもそも氷が動くわけないだろとか言う突っ込みは、 饅頭が生きている世界においては野暮である。 さて、池とうから上がったゆっくりチルノは音痴な歌声の方に向かって跳ねていく。 「あたいってばゆっくりね!」 向かった先には予想通りゆっくりがいた。 それも一匹ではなくゆっくりれいむの家族である。 ゆっくりチルノよりも二回りは大きな母れいむ一匹に4匹の小さい赤ちゃんで構成されたその家族は、 歌を歌いながらお散歩を楽しんでいる最中のようだ。 「「ゆ?ゆっくりしていってね!」」 ゆっくりチルノに気付いた一家がお決まりの挨拶をする。ゆっくりチルノもそれに応えて 「ゆっくりしていってね!れいむってばゆっくりね!」 と返す。 「ゆ?おねえさんゆっくりできるちと?」 赤ちゃんれいむの問いかけに 「あたいってばゆっくりね!一緒にゆっくりしようね!」 とゆっくりチルノが楽しそうに返す。 「「一緒にゆっくりしようね!」」 あっという間に仲良くなった一家とゆっくりチルノは一緒に遊び始めた。 「ゆー。それにしても暑いよ!ゆっくりできないよ!」 しばらく遊んだあと、体中から汗を流しながら母れいむがいった。 太陽は既に天頂近くまで上っており、夏の暑い日差しがぎらぎらと降り注ぐ。 先ほどまではキャッキャッと楽しそうに遊んでいた子れいむ達も今は暑さに疲れて ぺたんと地面にへたり込んでいた。 「あたいってば暑くてもゆっくりね!」 そんな中、氷でできたゆっくりチルノだけが元気にしていた。 「ゆ?おねえちゃんつべたい?」 ふと一匹の子れいむがゆっくりチルノから発せられる冷気に気づき、側に近づいて行く。 「ゆー!おねえちゃん涼しくて気持ちいいよ!ゆっくりできるよ!」 「ゆ?ほんと?」 「れいむも涼しくなりたい!」 「ゆっくりさせてね!」 一匹の子れいむの言葉を皮切りにして次々と他の子れいむたちもゆっくりチルノに近づいて行った。 「ゆ!ほんとだ!とっても涼しいよ!ゆっくりできるね!」 「おねえちゃんすごいよ!」 「ゆっくりさせてね!」 そう言いながら4匹の子れいむはゆっくりチルノを取り囲んでその冷気にあたり、ゆっくりし始める。 「あたいってばとってもゆっくりねっ!」 ゆっくりチルノもわけはわかってないがとにかく子れいむ達が自分を頼ってくれるのが嬉しいようだ。 一方母れいむは 「おかあさんも入れてね!おかあさんもゆっくりさせてねっ!」 とその周りをぴょんぴょん飛び跳ねている。 自分も冷気にあたって涼みたいようだ。 しかしすでに4匹の子れいむで囲まれたゆっくりチルノの周りに巨大な母れいむが入る余裕はなく、 何とか押し入ろうと子れいむ達をぐいぐい押し始めた。 「ゆゆっ!どいてね!おかあさんも入れさせてね!」 しかしそんな母の態度に子れいむたちから非難の声が上がる。 「ゆゆっ!おかあさん押さないでね!」 「そんなにされたらゆっくりできないよ!」 「おかあさんはあっちでゆっくりしててね!」 「ここにおかあさんのはいる場所はないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「どうしてそんなこというのぉぉぉ!!?」 一家が危うく親子げんかに発展しかけた時、ひらひらと何処からか蝶が飛んできた。 「ゆ!ちょうちょさんだ!ゆっくりしていってね!」 さっきまで押し入ろうとしていたのも忘れて蝶を食べよう追いかける母れいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっくりして言ってね!早く食べられてね!」 何とか飛び跳ねて捕まえようとするもうまくかわせれてなかなか捕まえることができない。 そんな母の様子を、子れいむ達はゆっくりチルノの近くで涼みながら見ていた。 「ちべたいねー」 「きもちいねー」 「あたい!」 と、母親に追い立てられた蝶がふらふらとゆっくりチルノの方に飛んでいき、その顔の中心に止まった。 蝶の方も暑かったのかもしれない。 しかし突然の事に驚いたチルノは対応できず 「ゆっゆっゆ……ゆっくし!」 とくしゃみをしてしまったのだ。 本人は自覚していないがくしゃみはゆっくりチルノ最強の武器である。 体の奥の冷たい冷気と水滴を同時に飛ばすことによって向いている方向の物を一瞬にして凍らせてしまう 破壊力を持つのだ。 その冷気はゆっくりレティやゆっくりもこーでも無ければ耐えることはできないだろう。 上手く活用すればあっという間にゆっくりチルノはゆっくりピラミッドの上位まで 上り詰める事が出来るかも知れない。 最も意図してくしゃみしたりなんて出来ないので意味ないんだけど。 さて、そんなわけでその行動は本人の意思にかかわらず相応の結果をもたらす。 すなわち、その時ゆっくりチルノの正面にいた子れいむの凍結という結果を。 「ゆっ!」 短い悲鳴を上げて驚愕の表情をして凍結した子れいむを見てその場にいた他のゆっくりたちの表情も凍りつく。 茫然としたゆっくり達が凍った子れいむを見つめる凍った時間の中で、 くしゃみに驚いた蝶だけが時間が動いているようにひらひらと飛んで行った。 数秒後、我にかえった母れいむが激昂してゆっくりチルノに掴みかかる。 「れっ、れいむの赤ちゃんになにするのおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」 その叫び声を受けて他のゆっくり達の時間も動き出す。 「ゆっ、こんなことするおねえちゃんとはゆっくりできないよ!」 「ゆっくりどっかにいってね!」 「ゆっくりしね!」 今まで涼ませてもらっていたことも忘れてゆっくりチルノを罵倒しながら母れいむの陰に逃げ込む子れいむ達。 一方激昂した母れいむはゆっくりチルノを責め続ける。 「赤ちゃんを元に戻してね!早く元に戻してね!今すぐ元に戻してね!直ちに元に戻してね! マッハで元に戻してね!元に戻せたら許してあげてもいいよ!」 「ゆ、ゆー……」 一方責められているゆっくりチルノ。 さすがに自分が悪いことは分かっているのか申し訳なさそうにしていて何も言い返さない。 だが、凍ってしまった子れいむをすぐに戻す方法など思いつかなかった。 「黙ってないで何か言ってね!早く溶かしてあげないと二度とゆっくりできなくなっちゃうよ! それでもいいの!?」 「ゆ……ゆ!?」 ーその時、ゆっくりチルノに電流走る―! 溶かす!そうだ、溶かせばいいのだ! ゆっくりチルノはそのゆっ⑨りブレインにも関わらず、水に沈んだゆっくり達がどうなるか知っていた。 そう、水に「溶ける」のだ。 ちょうど近くには大きな湖がある。そこに入ればすぐにでも「溶ける」だろう。 色々と間違っているがとにかくゆっくりチルノにとってこれは名案に思えた。 この子れいむを元に戻すことが出来ればまた一家と仲良くゆっくりできるに違いない。 あたいってば天才ね! さて、そうとなれば善は急げ。ゆっくりチルノは母れいむに言い放った。 「分かったよ!あたいがこの子を「溶かし」て元に戻して来るよ!あたいに任せてゆっくり待っててね!」 そう言うと凍った子れいむを口にくわえ、一目散に湖に向かって走って行った。 湖畔に辿り着いたゆっくりチルノは、さっそく湖に凍った子れいむを浮かばせた。 ここで勢いよく落として氷を砕いてしまうような真似はしない。 同じ過ちを犯さないなんてあたいってば天才ね! ……実際このゆっくりチルノにそんな経験はないのだが、多分平行世界の記憶でも流れ込んできたのだろう。 とにかく、これで子れいむは氷が溶けて元に戻るに違いない。 戻った時にはきもちよく「すっきりー!」という声を聞かせてくれることだろう。 そう、「すっきりー!」という声が聞ければいいのだ。 ゆっくりチルノはゆっ⑨りブレインにそう刻み込むと、凍った子れいむがその声を聞かせてくれるのを 今か今かと待ちわびた。 落とされた凍結子れいむはぷかぷかと浮かんだあと、はたしてゆっくりチルノの思惑通り融解しだす。 その様子を見て得意満面のゆっくりチルノ。 「やっぱりあたいってばゆっくりね!」 表面の氷が溶け、やがて子れいむ本体にも水温が伝わりその体が徐々に熱を取り戻し始める。 「…ゅ…さむいよ……ゆ…?」 ついに子れいむが意識を取り戻した。 無事子れいむが生き帰ったことに全身で喜びを表すゆっくりチルノ。 すぐに元気になって「すっきりー!」という声を聞かせてくれるに違いない。 しかし聞こえてきたのは予想と真逆の悲鳴だった。 「ゆ……ゆ!?い、い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!み゛ず!み゛ずがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 急に寒くなって意識を失い、意識を取り戻したらそこは地獄だった。 子れいむの経験を端的に表すとこうなる。 本能的に水の危険性を知っている子れいむは、何とか岸に上がろうともがくがもがけばもがくほどその体は 岸から離れていく。 「ゆ?れいむってば何してるの?遠くに行かないで早く戻ってきてね!」 予想と違った状況にゆっくりチルノは慌て始める。 どうしてだろう、子れいむを「溶かせ」ばいいはずなのに。 「お゛ね゛え゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 ゆっくりチルノの姿を認めた子れいむは必死に助けを求め始めた。 しかしどんどん離れていく子れいむはもはやゆっくりチルノが届く範囲とはかけ離れた位置にいた。 「なんでえええええええ!?!?どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおお!?!?」 幸運なことにゆっくりチルノは知っていた。 ゆっくりは水に「溶ける」ということを。 そして不幸なことにゆっくりチルノは知らなかった。 ………自分は水に入っても溶けないという事を。 「ゆ、ゆー。」 母れいむに責め立てらてた時のような困惑の声をあげるゆっくりチルノ。 助けにいこうとすれば自分が溶けてしまう。 何がいけなかったのだろう、自分は母れいむが言ったとおり子れいむを「溶かし」ただけなのに。 「ゆぅー!早くこっちに来てね!あたいが引き上げるよ!だから早くこっちに来てね!」 「ぞんな゛あああああああああああ!!!!だずげでよおおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりチルノにできるのは応援の言葉を贈るだけだった。 やがて水を吸った子れいむの皮がぶよぶよと伸びはじめ、体内から餡子が漏れ始める。 その事に気づいた子れいむが涙と絶望と恐怖と後悔にまみれた悲鳴を上げた。 「いやだああああああああああああああああああああ!!!じにだくない!じにだくないよおおおおおおお!!! も゛っどゆっぐりじだいよおおおおおおおお!!まだゆっぐりじだいごとだぐざんあ゛っだのにいいいいいいい!! ぎょうはがぞぐみんなでどっでもゆっぐりずるはずだっだのにいいいいいいいい!!! まりざとあじだあぞぶやぐぞぐもじでるよおお!がまんじでどっでおいだりんごまだだべでないよおおおお!! ほがのおいじいものももっどもっどだべだいよおおおおお!!いつかどおぐまでおざんぽじだがっだよおお!! おうだももっどうまぐなりだがっだよおおおお!!ぶゆのゆぎもみだがっだよおおおおおお!! ぞれにいづがおがあざんになっでおがあざんとれいむどこどもだぢでゆっぐりしたがっだよおおおおおお!! それなのにどおじでれ゛いむ゛がごんなめ゛に゛あう゛どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!? なにもわるいごどじでないのでぃいいいいいい!!おがじいよおおおおおおおおおおおお!! ゆめならざめでええええええええええ!!どうじでざめないのおおおおおおおおおおおお!?!? がみざま!もうゆるじで!ゆっぐりじでないでれいむをだずげでよおおおおおおおお!!! おがーざん!おねーぢゃん!まりざ!だずげでええええええええええええええええええええ!! どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおお!?!?もうやだおうぢがえるううううううううううう!! ゆっぐりじだいいいいいいいいいいいいい!ゆっぐりざぜでええええええええええ!!! ごんなどごろでじにだぐないのにいいいいいぃぃ…ぃ……あ、あんごが……あ………ぁ…………」 胸の内の全てを吐露するようなうざくてクソ長い断末魔の後子れいむの声は聞こえなくなっていった。 やがで皮も餡子も全て水に溶け、残されたリボンだけが子れいむの生きた証であるかのように水面に ぷかぷか浮かんでいた。 「ゆっ……うっうっ……」 その一部始終を見届けていたゆっくりチルノは耐えられない悲しみに涙を流し始める。 涙なのか氷が溶けてるだけなのかハタから見ると良く分からないが本人は泣いているつもりである。 「うっうっ……うあああああああああああああああああああああああ!!!」 耐えきれずついに大声をあげてゆっくりチルノは泣き始める。 どうして、どうして。そう聞きたいのはゆっくりチルノの方だった。 自分は子れいむを助けるために湖に落としたのに。 何で子れいむは死んでしまったのだろう。 母れいむの言うとおり「溶か」そうとしただけなのに。 わからない。わからない。 ただ悲しかった。さっきまで一緒に遊んでいた子れいむが死んでしまった事が、ただ悲しかった。 「うえええええええええええええええええええええええええんんん!!!!!」 あたりにゆっくりチルノの悲壮な鳴き声が響き渡った。 そしてひとしきり泣いた後 ゆっくりチルノは泣いていた理由を忘れた。 精神の防衛本能なのかとにかくなぜ自分が泣いていたのかすっぱり忘れてしまった。 さすが⑨!俺達に出来ない事を(ry そしてその後に残ったのは思う存分泣いてすっきりしたという感覚のみ。 「すっきりー!」 思わず声に出して叫ぶゆっくりチルノ。 そういえばよく覚えていないが確か自分は「すっきりー!」という声を聞きたがっていた気がする。 素晴らしい。目的は達成されたのだ。 何となくうれしい気分になるゆっくりチルノ。 「あたいってばゆっくりね!」 と思わず叫ぶ。そして湖に背を向け、戻ろうとしたその時 「やっと見つけたよ!」 という声が響いた。驚いてそちらを見ると先ほどのゆっくりれいむ一家だった。 いきなり子れいむをくわえて走り去ったゆっくりチルノをずっと探しまわっていたのだろう。 母はともかく子供たちはやや疲れた表情をしている。 「れいむの赤ちゃんはどこ!?早くれいむに返してね!」 母れいむがゆっくりチルノの側に娘がいないのを見て急いで詰め寄る。 しかし当のゆっくりチルノは困惑の表情を浮かべるばかり。 何故ならこの一家のことも既にゆっ⑨りブレインからは消え去っていたからだ。 「おねーさんだれ?なにいってるのかわからないよ?」 正直に自分の気持ちを言ったゆっくりチルノだったがその言葉を聞いた母れいむは驚愕の表情を浮かべたあと、 体(顔?)中を怒りで真っ赤にしてゆっくりチルノに詰め寄った。 「な゛っ……ふざけるのもいい加減にしてね!今すぐ赤ちゃんを返してね!じゃないと本当に許さないよ!」 そう言ってゆっくりチルノに軽く体当たりをする。 「ゆっ!?なに!?」 突然ことに後ろに転げるゆっくりチルノ。それを視線で追った母れいむはその先に信じられないものを見た。 湖に浮かぶ子れいむのリボンである。 「あ、あ、あ、あ……」 信じられない、といった表情で母れいむが体を震わせる。そして次の瞬間感情が爆発した。 「れいむの赤ちゃんに何したのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 ようやく体勢を立て直したゆっくりチルノにゆっくりとは思えぬ勢いで体当たりする母れいむ。 しかも今度は手加減抜きの全力である。 「れいむの赤ちゃんをどうしたの!?今すぐ答えてね!!赤ちゃんはどこ!?」 涙を流しながら激怒の表情でゆっくりチルノを問い詰める。 それを見て他の子れいむ達も状況を察したのか、ゆっくりチルノに攻撃を始めた。 「れーみゅをかえせええええええええええ!!」」 「よくもおねーちゃんを殺したなああああああああああ!!」 「ゆっくりしねえええええええええええええ!!!」 一家の総攻撃が始まる。 氷でできたゆっくりチルノは比較的硬いのでダメージは少ないが、それでも袋叩きはたまったものではない。 まるで抵抗できずに 「あたいは何も知らないよ!本当だよ!信じてよ!」 ただ必死に弁解をするだけだ。 「れいむの赤ちゃんを返せえええええええ!一緒にゆっくりしてた、これからもゆっくりするはずだった 赤ちゃんを返せええええええええ!!」 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」」 ひたすら体当たりを続けるゆっくり一家。並のゆっくりならとっくに餡ペーストになっているだろう。 「れいむってばゆっくりしてないよ!今すぐ辞めてよ!」 ゆっくりチルノは責められる心当たりがないものの必死にやめるよう懇願する。 やがてただ攻撃してもあまり効果が無い事に気づいたゆっくり一家は新たな行動に出た。 「「「ゆっくり落ちてね!」」」 ゆっくりチルノを湖に突き落したのである。 「ゆっ!?やべで!だずげてよ!」 先ほどの子れいむの凄絶な死にざまを覚えているわけではないが、それでも水はとても危険なものだと 頭に刻まれている(本当は何ともないのだが)ゆっくりチルノは必死にもがく。 しかし子れいむの時と同じようにもがけばもがくほど体は岸から離れていってしまう。 「あたいってば水だめなのおおおお!いやああああああああ!!!助けてえええええ」 必死に助けを請うゆっくりチルノ。 それに対してゆっくり一家は罵声を浴びせる。 「そうやってたすけをもとめてたれーみゅを殺したんだね!」 「おねーちゃんと同じくるしみを味わってしね!」 「おねーちゃんの仇、ゆっくりしね!」 「死ぬまでここで見ててあげるよ!感謝してね!だから苦しみながらゆっくり死んでね!」 「⑨~~~~~~!?!?!?」 ついにゆっくりチルノはパニックに陥る。 本当はゆっくりチルノは羽を使って飛ぶことができるため、簡単に水から脱出する事が出来るのだが、 パニックに陥った彼女はそれに気づくことができなかった。 例え冷静であっても自分が飛べる事を思い出せたかあやしいが。 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしね!!」」 もはや一家は完全にゆっくりしねコールだ。 どうやらゆっくりチルノが溺れ死ぬまでそこで鑑賞し続けるつもりらしい。 だが溺れることもなく、また脱出する方法も思いつけないゆっくりチルノはいつまで待っても死ぬことはない。 このままではいつまでもコールを続けることになっただろう。 そしてその事に気付けなかったのが、ゆっくり一家の命取りとなった。 ゆっくりチルノを湖に落としたらさっさと立ち去っていればよかったのに、大騒ぎを続けたせいで、上空を 飛んでいた天敵に自分たちの存在を気づかせてしまったのだ。 「うー?」 気分よくお空を飛んでいたれみりゃは下の湖面が騒がしい事に気づいた。 自分のご機嫌なお散歩を邪魔するなんて許せない。食べちゃうぞ。 そう思って下降しながら湖面に近づいていくれみりゃ。 そこによく見るゆっくりれいむの一家とあまり見かけない青いゆっくりを見つける。 何やら騒いでいるようだがれみりゃにとってはどうでもいい。 それよりお腹がへってきた。やっぱりみんな食べちゃおう。 そう思って一気に狩りの態勢に移るれみりゃ。 ゆっくり一家が気付いた時には、すでに手遅れだった。 「れみりゃだぁぁぁぁーーーー!!」 一匹の子れいむの叫びで一家が慌てて空を見上げた時、もうすぐそばまでれみりゃが近づいていた。 逃げる間もなく、二匹の子れいむがれみりゃの両手に捕われる。 「い、いやあああああああああああああ!!はなしてえええええええええええ!!」 「れーむ食べられたくないよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 悲鳴を上げる子れいむ達。 残った一匹の子れいむは訳もわからず一目散に逃げ出して行った。 それに対して一瞬ためらいを見せたものの果敢にれみりゃに立ち向かう母れいむ。 もう一匹たりとも自分の赤ちゃんを死なせたりするものか。 「れーむの赤ちゃんをはなせええええええええええええええええ!!!」 その瞳には強い決意が宿っていた。 だがれみりゃにはそんな母れいむの気持ちは分からない。 両手の小さいれいむを見て、自分に向かってくる大きいれいむを見て、それから考える。 ―両手が塞がっていては大きいれいむが食べられない― 大きいれいむを捕まえて食べるためには両手を空ける必要がある。 ではどうするか。 そこでれみりゃが取った行動は小さいれいむをさっさと食べて両手を空けるという合理的な方法 ――ではなかった 「うー!小さいのはいらないからぽいするの!ぽい!」 そう言って両手の子れいむを湖に投げ込んだのだ。 「み、みずいやああああああああああああああ!!れーむ死んじゃうよおおおおおおおおおおお!!」 「おねーちゃんみたいになりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 水に放り込まれた子れいむ達が絶叫を上げる。 それを見て母れいむは慌てて方向転換して子れいむ達に向かって突進する。 「待っててね!今すぐ助けるからね!」 そして湖に飛び込もうとジャンプした瞬間れみりゃの手に捕われた。 「ゆ!?ゆっくりしないで離してね!赤ちゃんが死んじゃうよ!」 慌ててれみりゃの手の中でもがく母れいむ。 だがその訴えはれみりゃの耳を右から左に抜けていった。 れみりゃが考えるのは別のこと。 ―大きいれいむも片手で持てる― つまりそれはもう片方の手にもう一匹持つことができるということだ。 どうせなら両手に持たないともったいない。 そう考えたれみりゃはのこったゆっくりの物色を始める。 「うー♪一番おいしぞうなのをだべるどぉー♪」 結果、れみりゃが選んだのは残ったゆっくりの中では一番大きく珍しい、ゆっくりチルノだった ゆっくりチルノは既に自分が何で水の中にいるか忘れていた。 もがくのも疲れたので顔を水につけて水の中を見ながらぷかぷか浮いている。 「おさかなさんがいっぱい!あたいってばゆっくりね!」 もごもごと泡を出しつつ誰にも聞こえないつぶやきをもらす。 「!?」 と、急にその体が持ち上げられた。れみりゃである。 「う~♪あっかいぷでぃんとあっおいぷでぃん~♪」 楽しそうなその歌声の間違いに突っ込むものはこの場にはいなかった。 ただ両手にゆっくりを抱えて楽しそうに飛び上っていく。 「はなじでえええええええええええええ!!!あがぢゃんが!れーむのあがぢゃんが死んじゃうううううううう!!」 「あたいってばお空を飛んでるみたいね!」 対照的な声音を上げつつ、れみりゃに抱えられた二匹は空に上がっていった。 「おがあざああああああああああんん!!いがないでえええええええええええええええ!!」 「どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 絶望の声を上げる二匹の子れいむを残して。 飛び上がったれみりゃはさて、どっちから食べようかと二匹のゆっくりを眺めた。 かたや 「れーむの赤ちゃんが……なんで……どうじでごんなごどにいいぃぃ……」 悲しみに暮れて嗚咽を漏らすゆっくりれいむ。かたや 「たかい!たかい!あたいってば最高ね!」 自分の危機的状況を理解していないのか、楽しそうにしているゆっくりチルノ。 ちょっと悩んだ後、れみりゃはとりあえず大きい方から食べることにした。 「う~♪おっきいぷでぃんをだべちゃうど~♪」 「ごべんねえええええええ……守れながっだおがあざんをゆるじんぶぎゅっ!?」 自分の世界に入り込んでいた母れいむにいきなり走る激痛。 れみりゃが後頭部を齧り取っていた。 「いだいいだいやべでえええええええええ!!れーむまだあがぢゃんづぐるんだがらああああああああああ!! たべぢゃらめえええええええええええええええええ!!!」 「うっ♪うっ♪うぁうぁ~♪」 絶叫を上げる母れいむに楽しそうなれみりゃ。 ―こっちのぷでぃんはなかなかの甘さだ。もう片方のぷでぃんはどうだろう― そう思って今度はゆっくりチルノを食べることにするれみりゃ。 どうやらこのれみりゃは本物のプリンを食べた事が無いらしく、 食べ物の総称としてぷでぃんと言っているらしかった。 「う~♪あ~ん♪」 大口を開けてゆっくりチルノに噛み付く。 がぶっ その瞬間二つ分の悲鳴が上がった。 「い、いだいいいいいい!あだいってば食べられないいいいいぃぃぃぃ!」 「う゛あ゛ぁぁぁぁぁ!ざぐや゛ああああああああああぁぁぁぁ!!」 何度も述べているようにゆっくりチルノは氷である。 当然固い。そして冷たい。 そんなものに思いっきり噛み付けば……痛いに決まっている。 「ざぐや゛あああああああああああ!!ざぐや゛どごおおおおおおおおお!?!?」 噛み付いた歯から頭に響く冷たさと痛みにれみりゃは悲鳴を上げて見知らぬ人物の名を呼ぶ。 そして勢いのまま抱えていた二匹を放り出し、何処かに飛んで行ってしまった。 「い、いやああああああ!!!!いがないでええええええええええええ!!」 「あたいってばおぢぢゃうのおおおおおおおおお!!」 放り出された二匹はたまったものではない。 さっきまで離してと言っていたのに今度はそのれみりゃに助けを乞う。 が、その願いが聞き入れられることはなかった。 「もっどゆっぐりじだがっだよおおおおおおおおおおお!!!」 「アイシクルウォールイーーーーーズィィィィィィィ!!」 重力に任せて二匹はばらばらに落ちていった。 さて、ここで場面は変わってさきほどの襲撃から逃げ出した子れいむである。 パニックになって逃げ出してしまって家族と離れ離れになったが、今は何とか落ち着きを取り戻していた。 そしてその落ち着きを取り戻した餡子脳は先ほどの襲撃の一つの結論を導き出していた。 ―もう自分の家族はいない― れみりゃの恐ろしさは子れいむもよく知っている。 あの状況で他の家族が助かったとは思えない。 これからは、自分はひとりで生きていかねばならないのだ。 「ううっ、おかーしゃん……おねーちゃん………」 ついさっきまでみんなでゆっくりしていたのに、いきなり自分一人になってしまった。 その悲しみはいかほどのものであろうか。 「みんなともっとゆっくりしたかったよ……でも……これからはみんなの分までれーむがゆっくりするね……」 新たな決意を胸(顔?)に子れいむが顔をあげた時、上から懐かしい声が聞こえてきた。 「ゆううううううううううううううううううううっっっ!!!!」 「おかーしゃん!?」 その声に驚いて上を見上げる子れいむ。そこには空からものすごいスピードで 自分に向かってくる母の姿があった。 「ゆ!?おかーしゃん!てんごくから会いに来てくれたんだね!とってもうれしいよ!またいっしょに ゆっくりしようね!!」 喜びでぴょんぴょん飛び跳ねつつ母へと言葉を投げかける子れいむ。 そんな娘の姿に母れいむも気付き、思わず喜びのあまり落下と言う絶望的状況を忘れる。 「ゆ!れいむの赤ちゃん!生きててくれたんだね!とっても嬉しいよ! もうほかの赤ちゃんはいないけど一緒にゆっくりしようね!」 親子の感動の再会である。 二人の距離はどんどん近付いていく。 そして…… 「おかーしゃあああああああああんぶべっ!?!?」 「れえええええええええええむぎゃあっ!!!!!」 天文学的な確率で二人の距離が0になった瞬間、お互いの名を叫びつつ仲良く餡ペーストになった。 一方同じように投げ出されたゆっくりチルノ。 重力に引かれどんどん地面が近づいてくる。 「あたいってばゆっくりしてないいいぃぃぃぃぃ!!!」 ゆっ⑨りブレインでもこのままでは死んでしまうことは分かる。 ゆっくりチルノの頭にこれまでの楽しかった思い出が走馬灯となって流れ始めた。 その走馬灯は……今度は0.5秒で終わった。 楽しかった思い出も忘れてしまうゆっ⑨りブレインの悲劇である。 そしてそんな事とは関係なく死という現実が迫ってくる。 「あたいってば幻想郷最速ねぇぇぇぇぇぇっ!」 どこぞの天狗が聞いたら怒りそうな事を叫びつつ、ゆっくりチルノは恐怖で目を閉じる。 加速された体は地面に向かって一気に落下し激突――-―― しなかった。 「ゆ?」 疑問の声を上げてゆっくりチルノが恐る恐る目をあけると、何と自分の体が浮かんでいるのではないか。 そう、この危機的状況でゆっくりチルノの本能が彼女の羽を無意識に羽ばたかせるという行動をさせたのだ。 何という奇跡!生命の神秘! 次第にゆっくりチルノも自分が飛んでいることに気づいたのか、喜びの声を上げ始める。 「すごい!あたいってば飛べたのね!」 しばらくパタパタと低空飛行を楽しんだ後、着地するゆっくりチルノ。 ふぅ、と一息ついて空を眺める。 あれほど太陽が輝いていた空は、いつの間にか夕焼け色に染まっていた。 よく覚えていないけど今日はもう疲れた。 さっさとおうちに帰って休もう。 そう考えたゆっくりチルノはゆっくりとおうちに戻っていった。 おうちの場所を忘れて3時間ほどさまよった後、 ようやくゆっくりチルノは自分のおうちを見つけることができた。 途中で自分が何をしているのかも忘れたりしたため余計に時間がかかった。 「ふぅ、あたいってばゆっくりね!」 そう言って巣穴に潜り込むゆっくりチルノ。 しかしそこには………先客がいた。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪……ゆっ?だれ!?ここはまりさのおうちだよ!」 ゆっくりチルノが蓄えていた木の実を頬張っていた黒帽子のゆっくりが振り向き、自分のおうち宣言をする。 一瞬呆気に取られるゆっくりチルノだが、しかしさすがのゆっ⑨りブレインでもこれには黙っていない。 ここは頑張って自分が掘った巣穴なのだ。他人に渡すわけにはいかない。 「何言ってるの!ここってばあたいがつくったおうちよ!その木の実もあたいが集めたものだよ!」 「ふざけないでね!この木の実は最初からここにあったんだよ!ここはまりさが先に 見つけたからまりさのおうちだよ!」 傍若無人な事を言うゆっくりまりさ。 普通のゆっくりならここでさらに強く言い返すところだが、ゆっくりチルノの頭は既に混乱し始めていた。 ―そういえば勢いで言ってみたけど、自分がその木の実を集めた記憶はない。 このあたりは草が茂っていて場所が分かりにくいし、もしかしたら本当に巣穴の場所を間違えたのかも… そうだとするとここはこのまりさのいうとおり自分のおうちじゃないんじゃないんだろうか― うーん、と悩むゆっくりチルノにゆっくりまりさの言葉がとどめを刺した。 「ここはまりさのおうちだよ!でも今すぐ出ていくなら木の実を少し分けてあげてもいいよ!」 既に傾きかけていたゆっくりチルノにこの言葉は決定的だった。 ―自分がおうちを間違えてとても失礼なことをしたのに、食べ物を分けてくれるなんてなんて親切なんだろう― 「ごめんね!間違えちゃった!あたいってばゆっくりね!」 照れるように笑ってゆっくりチルノが言う。それを聞いてゆっくりまりさは 「分かったのならさっさと出て行ってね!もう来ないでね!」 そういっていくつかの固い、食べかけの木の実をゆっくりチルノの側に投げた。 「ごめんね!ありがとね!」 ゆっくりチルノは礼を述べると木の実を口に詰め込み、巣穴を抜け出していった。 後にはニヤリと笑うゆっくり魔理沙が残された。 「むーしゃむーしゃ、⑱ー!」 巣穴の側で木の実を食べてよく分からない叫びを発するゆっくりチルノ。 18は9の2倍なので2倍幸せと言う意味である。 こんなギャグを思いつくなんてあたいってば天才ね! と自己満足に浸りつつゆっくりチルノは木の実を食べ終えた。 色々あったとは言え何度も水没したことで既に必要な食事量はほとんど満たしていたので、 少ない木の実でもゆっくりチルノは満腹だった。 しかしそろそろ本当に急いでおうちを探さなくてはならない。 もうすでにまんまるのお月さんが浮かんでいる。 「あたいってばゆっくりしてらんないわ!」 慌てておうち探しを再開する。 が、いくら探しても自分のおうちはみつからなかった。 さきほどの巣穴が本当のおうちなのだから、当然である。 さらに一時間ほど涙目で巣を探し続けたがついに見つからず、 ついにゆっくりチルノは木陰にばったりと倒れ伏した。 「あたいってばゆっくりしすぎね……」 もう仕方が無い。きっと巣穴の場所を忘れてしまったのだろう。 今から巣を掘ったり探したりなんてできないし、今夜はこの木陰で眠ろう。 きっと明日になったら巣の場所も思い出すに違いない。 そう考えたゆっくりチルノは木の側で隠れるように横(縦?)になった。 しかし瞼を閉じ、いざ寝ようとすると頬にあたりがなにかかさかさするものがいる。 何かと思って目を凝らしてみると、それは蟻の行列だった。 「あたいってばラッキーね!」 目を輝かせながら目の前の蟻をパクンと食べるゆっくりチルノ。 何匹か食べたところで今度は蟻たちに息を吹きかけ始めた。 「ふーっふーっ」 本来、ゆっくりチルノが他の生物を凍結させるほどの冷気を出すにはくしゃみをするしかないが、 蟻ぐらいの小さい生き物相手であればただ息を吹きかけるだけでも凍結させることが可能なのである。 こうして蟻を冷凍保存しておき、明日の朝起きたら食べよう、と言うのがゆっくりチルノの考えだった。 20個ほど蟻の氷塊を作ったところでゆっくりチルノは眠ることにした。 そして、その氷塊を眺めながら、これなら明日の朝ご飯はごちそうね!と幸せな気分で眠りに就いた。 しかしそこはゆっくりチルノ、ちゃんと作戦に穴が開いている。 いくら凍らせたとはいえこの夏の熱帯夜、小さな氷塊などすぐ溶けてしまう。 ゆっくりチルノが熟睡した後、溶けた氷塊から蟻たちが抜け出していくのに、気づくものはいなかった。 そして翌朝。 水色の髪に薄い色の羽、氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝は 木陰で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 そして昨日作った朝食用の氷塊など当然のように忘れ、また朝食探しに飛び跳ねていく。 果たして今日はどのような一日になるのだろうか。 夏の青い空は、昨日と変わらぬ晴天の色を湖畔に住む生き物たちに伝えていた。 あとがき 今まで何度もSSを書きかけて途中で挫折したけど、初めて一つ書き上げる事が出来ました。 こういうの書く時は勢いって大事ですね。 しかしおかげで貴重な時間が6時間ぐらい潰れてしまった。 ゆっくり虐待してた結果がこれだよ! あれ?そういえばあんまり虐待はしてないような…… このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2751.html
無垢なゆっくりの虐待注意。 Dear ○○ お久しぶりです。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。 ○○さんはお変わりなく優雅に虐待を嗜んでいらっしゃいますでしょうか? 私は最近は仕事に追われて、なかなか満足するほど心行くまで虐待、 とはいかない日々を送っております。 (私個人の名誉の為に付け加えさせていただきますと、 返事が遅くなった理由も多忙により手紙に書くような虐待ネタを仕入れられなかったからで、 決して筆不精ゆえのものではなかったと釈明させていただきます) そんな充実とは言いがたい虐待ライフを過ごしていた私ですが、 先週末の虐待では中々のネタを仕入れることができましたので、報告しようかと思います。 あなたに虐待趣味に染められてから半年が過ぎようかという11月23日。 そろそろ私も虐待の基本としての殴る蹴る千切る燃やすの暴行から ステップアップしたいな、なんて思いながら虐待のネタを考えていると、 ふと、料理に使っている白ワインのボトルが目に付きました。 それで閃いたんです。今度の虐めは、毒にしようって。 あ、「酒が毒って子供じゃないんだから」なんて思いませんでしたか? アルコールを舐めてはいけませんよ。 エタノールを摂取した時に中間代謝物として生成されるアセトアルデヒドは、 最近話題になっているシックハウス症候群の原因物質で、発ガン性もある強い毒物なんです。 人間には脱水素酵素の働きでアセトアルデヒドを酢酸に分解する機能がありますが、 ゆっくりはどうでしょうか。考えるだけでもわくわくしてきませんか? なんて、教養豊かな○○さんには余計な説明だったでしょうか。 能書きを垂れるのはこの辺にして、実践の報告に移ろうと思います。 今回の虐待では、ターゲットはゆっくりれいむにしました。 ほら、何となくまりさ種ってれいむ種よりお酒に強そうな気がしません? まずは手始めに普通に飲ませてみます。 「お姉さん!これがゆっくりできるジュースなの?」 なんて、疑いもせず目を光らせて聞いてくるれいむを見ていると、早速ゾクゾクしてきます。 こんな純粋で無垢なれいむがこれから虐められるなんて、可哀想。 でも、ゆっくりは生きている事が罪ですからしかたありませんよね(笑)。 「そうだよ、これを飲むとすっごくゆっくりできるんだよ」 と私が言うと、 「飲ませて飲ませて!」 って愚かにもねだってきます。扱いやすいなあ。 「ほんとだ。このジュースすっごくゆっくりできるね!」 今回は子供でも飲めるようなかなり甘口のワインを使ってみました。 半分ジュースみたいなものですからゆっくりにも好評のようです。 ゆっくりが美味しい思いをするかと思うと多少腹も立ちますが、 死刑囚に与える最後の食事みたいな物だと思えば、まあ悪くないかなって。 れいむは瞬く間にボトル1本分を飲み終えてしまいました。 「お、お姉さん~、目がゆっくりま、まわるよお~」 かなり軽い酒とはいえ、ゆっくりの体重を考えればボトル1本は相当の量です。 器官が単純な事もあってか、すぐに酔いが回っていきました。 何を食べても餡子にしてしまう出鱈目な生命体ということもあり不安だったのですが、 どうやらゆっくりも呑めば酔うようです。 そうとわかれば、後はじっくり観察させてもらうだけです。 人間と同じなら、呑みすぎた後には地獄の苦しみが待っているはずですから。 30分もすると、早速れいむは苦しみ始めました。 「ゆぅ~、お姉さん~、気持ちが悪いよう~。助けて~」 ふらふらと千鳥足で歩きながら助けを求めるれいむ。ソソります。 せっかくですから酔いが更に回るように思いっきり転がしてみました。 「ゆ、ゆぅ~!?お゛ね゛えざん、ゆっぐりやべでね~」 酔いのせいで踏ん張る事もできずに向こう側の壁にぶつかるまで転がるれいむ。 「びどいよ、おね゛えざ……ゆ!?お゛え゛ぇぇえ゛~」 目も虚ろで視点も定まらないれいむ。ついには餡子を吐いてしまいました。 愉しくなって参りました。いいゆっくりは苦しんでいるゆっくりだけですからね。 しかし、吐かれてはせっかく飲ませたアルコールが無駄になりかねません。 「れいむ、これを飲めば気持ち悪くなくなるよ」 それを防ぐ為、もう1本用意しておいたワインをとりだし、れいむに差し出します。 「ゆぅ~、ゆ、ゆっくり飲ませてね~」 よしきた。ゆっくり飲ませますよ。 「ゆ!?れいむこのジュースはもう飲みたくないよ!?」 うるさい。黙れ下等生物♪ れいむの悲鳴を無視してワインを更に注ぎ込みます。 「ゆ゛、ゆゆ゛ぅう゛~~!!やべでね~~!!」 さすがに注ぎすぎたのか、皮はぱんぱんに膨れ上がり、中からはたぷたぷと音が聞こえます。 まあそのうち餡に馴染むでしょう。ゆっくりですし。 さらに待つこと10分。れいむは本格的に苦しみ始めます。 「ゆげえ゛えぇぇぇ!お゛え゛えぇぇ!」 ううん。いとをかし。と、いうには少し汚い光景でしょうか。 「お゛ね゛えざん、だずげで~、げいぶ、ごのばばじゃ、死……ゆげえ゛ぇぇえ」 わかるわかるよー。呑み過ぎたときって本当辛いですからね。 自らの吐瀉物で出来た餡溜まりの中を転げまわるれいむ。 絵面的にも露骨に悲惨で中々いいですね。あ、同封してある写真はこの時に撮ったものです。 「お゛があざぁぁん゛、ぐるじい゛よ~、だずげで~」 ついにはここには居ない母親にまで助けを請い始めました。 おいおい。もうとっくに独り立ちした成ゆっくりでしょうに、情けなくないのかしらん。 「う゛ぅぅぅ。いっぞ、だれ゛が、ごろじでえ゛ぇぇぇ、ゆげえ゛ぇぇえ」 あまつさえ死を求めるなんて。いつもアルコールランプで炙ったりしてもそう簡単には 殺してなんて言わないのに。でも何となくわかります。 酔いの苦しみって心ごと弱っていくような感覚がありますもんね。 「も゛う゛いやぁぁあぁ!ゆげっ、ごぷぅわぁっ!」 晴れやかな気持ちで眺めていると、れいむは一際大量の餡を吐き出しました。 いくらあれだけの量飲ませたとはいえ、 あんなに吐いたらそろそろ死んじゃうかもしれませんね。 というより、度重なる嘔吐で餡の逆流防止弁が壊れたのでしょうか。 単に酔って吐く量としては異常です。 実際、れいむの頬は落ち窪み、ワインを飲ませる前より体積が減っている気もします。 そう思ってみると、うめき声も、単に気持ち悪いというより、 痛みを苦しがるものが混じっているように感じますね。 では、そろそろ止めと行きましょうか。 私はえいっと、れいむを軽く蹴飛ばしました。 「ごぷっ、かはっ、げぼぉうぁあ゛ぁぁぁ」 酔いが回りきっている状態で餡子脳を揺さぶられたれいむは更に盛大に餡を吐き出します。 経験上そろそろ致死量と思われる量の餡子を吐き出してもまだ嘔吐が止まりません。 大量のアルコールが混じった餡を吐き出すことで顔色そのものはよくなってきていますが、 これだけ出餡してしまっては先は長くないでしょう。 「ゆ、ゆっくりしたかった……よ……ごぷっ」 あ、死にましたね。お疲れ様でした。 以上です。いかがでしたでしょうか? ゆっくり虐待に関してはベテランの○○さんには、今更って感じかもしれませんが、 私は初めての経験だったのでとても楽しむ事ができました。 いつもみたいにギャーギャー悲鳴を上げるのもいいですが、 今回みたいにグデングデンになって苦しむゆっくりも非常に趣があるものですね。 ちなみに、今回のゆっくりの死体も一口いただきましたが、 フルーティな風味の中にお酒の香りもして、中々に美味しかったですよ。 1粒で2度美味しいこの虐待、まだでしたら試してみてはいかがでしょうか? P.S. 今度仕事の関係で○○さんの住所の近くまで出張するのですが、 もしよかったら会えませんか? お宅の地下にあるという、ゆっくり虐待施設を見せていただけたらなー、なんて。 あ、嫌だったら全然断ってくれておっけーですよ。でも気が向いたらお願いしますね。 Your friend ×× (完) 初めての虐待SS。 というかこの長さの文を書いたのも初めてなので、 色々未熟な所が隠せませんね。 しかもネタとしては激しく既出なんだろうな。 2日酔いネタもやろうかと思ったのですが、 結局れいむが呻き苦しむだけで助長かとも思い、省きました。 皆様のお口に合えばいいのですが。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3715.html
※既出ネタでごめんなさい パァン、と乾いた音が響き、一匹の成体ゆっくりれいむの体が吹き飛んだ。 低空を飛んだ後ゴロゴロと体が転がっていき、勢いよく柵に叩きつけられる。 飛ばされたれいむは痛みを堪えて呻きながら起き上がると、ずりずりと這うように元の場所へと戻ろうとした。 そんな鈍い動きのれいむの真横に、バァン、と一つの光弾が勢いよく着弾。その速度は弓で飛ばした矢の如し。 自分の間近で炸裂した圧倒的な暴力にれいむはビクゥ、と跳ね上がると這う移動から即座に死力を尽くした跳躍移動へと移行した。 そうして飛ばされる前の場所へと舞い戻ったれいむは、再び当初の行動に戻り、目の前の物を口に含んで、はもはもとそれを食む。 れいむが食しているのは、雑草だった。とある庭に鬱蒼と生い茂った多量の雑草である。 れいむは苦くて不味いそれを涙と嗚咽を堪えて無理矢理口に押し込んでいきながら、顔はそのままチラリと視線を横に向けた。 その先に居るのは、二人の男。 二人の男は今、家の縁側でのんびりと酒を飲みながら、碁を嗜んでいる。片方は家の主で、もう片方はその友人だ。 今は家の主の方が長考しているようで、うーむ、と手を顎にあてて考え込んでいる。相手の男はその様をのんびりと酒を飲んで待っていた。 この二人こそが、今れいむに雑草を食べる事を強要している者達だった。いや、れいむだけではなく、れいむの家族にだ。 友人の男の方は人間ではなく妖怪だった。妖怪は人間を襲う者ではあるが、中には人間と仲の良い者もいる。 しかしながら、れいむにはその判別はつかない。どちらも恐ろしい人間と映っている。 その恐ろしい人間──妖怪の友人の方が、チラリと視線を庭にいるれいむに寄越した。交錯する視線。 れいむはしまった、と思い、直後ぞっとするようなドス黒い恐怖がせり上がって来て、れいむの全身を支配した。すぐさま視線を前に戻し、雑草喰いをしようとする。 だが、遅い。パァン、と再び乾いた音がすると同時にれいむは再度吹っ飛び、柵にまた叩きつけられた。 れいむが吹っ飛んだ原因は、妖怪の男が放った光弾だった。ノーモーションで放たれた高速の弾丸がれいむの頬を直撃し、れいむに激痛と恐怖を刻み込んだのだ。 相変わらず見事な技といい音だ。人間の方の男がそう言って、パチリと黒石を碁盤に置いた。 その後すぐさま妖怪の男の方は白石を置いた。人間の男が長考している間に打って来る手とそれの反撃手を既に頭の中で展開させており、予想通りの手が来たようだ。 人間と妖怪では寿命が違う。年季が違う。その事を再び痛感しながら人間の男はまた長考に入った。 その一連のやり取りを気に掛ける余裕はれいむには無かった。全身に走る痛みと全身を支配する恐怖を振り払いながら、必死で元の場所に戻ろうとしている。 だが妖怪の男が白石を置いて再び視線を庭に戻す前に辿り着く事は出来なかった。またもや合う視線。 直後、れいむの両脇に高速で弾丸が着弾した。先ほどの痛みと恐怖を呼び起こすそれにれいむは口元まで出かかった悲鳴を堪えた。 堪えて、涙を零しながら跳ねる。 再び元の場所に戻って、雑草喰いを再開する。 この雑草掃除をしているのはれいむだけでは無かった。ラインを割り振られたかのようにれいむの両隣には子ゆっくり達がそれぞれ配置されていた。 子れいむと子まりさ、合わせて五匹。れいむと合わせて計六匹が、この家の庭の草抜きに従事していた。 そのどれもが悲壮感に顔を歪ませており、ボロボロと砂糖水を地面に零している。 声をあげることは許されない。あの弾丸によって制裁を受ける。 手を休めることは許されない。暴力によってそれを理解させられる。 常に全力でなければならない。有無を言わさずに撃たれる。 それはこの仕事を始めた当初に嫌という程妖怪の男に教えられた。 あんな痛い思いはもう嫌だ。そう餡の芯まで叩き込まれた。 なんで、なんでこんな事をしなければならないのか。ゆっくり達はそんな思いで一杯だった。 だが、口答えをすれば痛めつけられる。決して殺されることなく、口を噤んで再び仕事を再開するまで痛めつけられる。 男はゆっくりにそんな苦しみを与えることを、片手間に、楽にやってのける。 そんなゆっくり出来ない思いに満たされたゆっくりとは対照的に、縁側の男たちは実にのんびりとしている。 人間の男がパチリと黒石を碁盤に置いた後、その手を膝に置くことなく、ある物を手にとってそれで何かを食した。 それは餡子だった。しかしただの餡子ではない。れいむの伴侶のまりさの餡子だった。 れいむが子供の頃からずっと一緒だった愛するまりさは今、人間の男の傍らに置かれている。 髪は全て一本も余すことなく抜かれ、頭頂部は丸くくりぬかれて中身の餡子を曝け出している。 底部は二度と動かせぬようにずたずたに破壊されており、雑音を発せぬように口は縫い付けてある。 帽子はとっくに本人の前で燃やして目は砂糖水で床を汚さないようにこれもまた縫い付けてあった。 人間の男は、そんな状態のまりさの頭にスプーンを突っ込んで、グチャグチャとかき回した後一掬いして口に運んだ。 まりさはまだ生きている。生きている証を、動きを表すことは無いが、まだ意識は残っている。 意識を残しつつ痛みを与えることによって、ゆっくりの餡子は美味になることを、この男達はよく知っていた。 妖怪の男はまたもやノータイムで白石を碁盤に置く。人間の男はまたそれに苦笑しつつ、長考に入った。 手に持っていたスプーンをまりさの餡子に突き立つように刺し、手を顎に当てる。スプーンを突き刺した際まりさの体がわずかように妖怪の男には見えた。 本当、丁度良かった。 人間の男が視線を碁盤に注いだまま、嬉しそうにそう言った。ゆっくり一家の事を言っているのだと、友人の男にはすぐに分かった。 今日は酒を飲みながら碁を打つ約束をしていた二人は、一緒にこの家に来た。家の主は酒を買いに行った際に妖怪の男とばったり会って共に来たのだ。 その道すがら、人間の男は庭の雑草が生えすぎで、そろそろ草抜きをしなくてはと愚痴を零していた。 そうして談笑しながら家に着くと、そこには柵を乗り越えて男の家に侵入しようとしていたゆっくりの一家がいたのだった。 野生のゆっくり一家だった。魔法の森に住んでいた一家は、子供が増えて家が手狭になってきたので新居を探していた。 そうして目的地も無く彷徨った末に、ちょうどよく人里の離れにあった男の家を見つけたのだった。 その家の持ち主も、?ちょうどよく?その一家を見つけた。いや、人間の男の方は最初鬱陶しいといった感情を持ったのだが、妖怪の男の方がそれを見て「丁度良いじゃないか」と言ったのだ。 妖怪の男は人間の男に説明する前に、ゆっくり一家を自身の弾幕で痛めつけた。 決して殺すことなく、傷を負って作業効率が落ちる事無きように。 一家を痛めつけた男は親まりさを人間の男に手渡して、残りの一家を庭に放り込んだ。 そして二人揃って玄関から家に入り、縁側に出たところで、男二人を見て威嚇した親れいむとその子供を再び弾幕で痛めつけた。 妖怪の男は痛めつけながら、庭の雑草を食べること。口答えは一切許さぬこと。無駄口、手抜きは絶対許さぬこと。 碁が終えるまでに終わらせることを言いつけて、親まりさに食べるための処置を施した。 他の家族が泣き喚き、許しを乞う目の前で、帽子を燃やして髪を抜き、目と口を縫い付けて底部をボロボロに頭をくりぬいた。 それを人間の男に手渡した後、仕事を始めていない一家を弾幕で叩きのめした。 そうして親れいむがようやく理解し、子ゆっくり達に草を食べるように命じて仕事を始めた。 しばらくは子ゆっくり達は嫌だと言ったり泣いて仕事を放棄したが、その度に男の弾丸がその小さな体を殺すことなく猛威を振るった。 そうする事によって子ゆっくり達もようやく理解して、黙々と雑草を食べる仕事についた。 その後はたまに手を抜いたり手を休めた者を男が片手間に撃つ程度だった。 そうしてゆっくり一家の仕事が安定したのが一時間前。ゆっくり一家はその間ずっと草を食べていた。 そして、そろそろ限界が訪れようとしていた。いや、とっくに限界は超えていた。限界を超えた更なる限界に到達しようとしていたのだった。 子まりさがうぷっ、と草を食べる手を詰まらせた。子ゆっくりの小さい体では、この大量の草を食べることは無理だ。 それにも関わらず、恐怖に怯えて無理矢理詰め込んだ。既に子まりさの体はパンパンに膨らんでおり、いつ皮が破けぬとも分からない。 それでもまだ詰め込むものだから、子まりさはつい吐きそうになった。だが吐いたらまた痛い。 そう思い吐くのを堪えた子まりさだったが、我慢できるわけもなく、エレエレと餡子を庭に吐いてしまった。 エレエレ、と口に出して吐いたことにより、家族も妖怪の男もそれに気付いた。 一通り餡子を吐いた後、子まりさは青ざめた。ガタガタと震え、大粒の涙が目から溢れる。 その子まりさの前に、バッと親れいむが出てきた。男との間に割ってはいるように。 親れいむは額を地面にこすりつけ、子まりさと同じように大粒の涙を零しながら、男に懇願した。 許してくれ。子供には酷いことをしないでくれ。餡子は自分が片付けるから、どうか許して欲しい。 そう言った旨の嘆願を、濁った涙声で喚き散らした。 妖怪の男はそれを聞き、大声を出した事と手を休めた事の二つの罰のため、二発の光弾を撃った。 一発目で土下座のように頭を下げたれいむの体が吹き飛び、二発目が空中にいたれいむの体を更にぶっ飛ばした。 先ほどの比ではない勢いで親れいむが柵に叩きつけられる。地面に落ちたれいむは呻き声をあげて痙攣しだしたが、手加減したのでじきに回復するだろう。 親れいむが痛めつけられた様を目の当たりにした子まりさは自制心と理性などどこかへ吹き飛んでいた。 嫌だ。 その意思を親れいむ以上に濁った声を舌ったらずな口調で喚く。 その直後に子まりさは顔面に弾丸を受けて宙を飛んだ。 体の弱い子ゆっくりに合わせて手加減されたそれは、人間で言うならば思いっきり内臓が潰れかねない勢いで腹を殴られたに等しい。 人間なら内臓が潰れれば酷い負傷だが、衝撃に強い球形で皮も弾力に富み、内臓の無いゆっくりにとっては痛いだけでケガではない。 皮も破れていないし、どこも損壊していない。痛みを堪えれば充分に仕事は可能だ。 親れいむの傍らに落ちた子まりさ。その落ちる音で痙攣から目覚めた親れいむは、酷く怯えた様子で子まりさを咥えると元の仕事位置に戻った。 子まりさに草を食べるように言いつけて、自分は子まりさが吐いた餡を口に詰め込む。 他の子ゆっくり達はそんな様子をガタガタ涙目で見ていたが、恐怖から口は止めてはいなかったので罰は無かった。 碁が終わるまでに仕事を終わらせなければ、全員殺す。 妖怪の男が言ったその言葉を思い返し、親れいむは草と一緒に餡子を体に詰め込んだ。甘い餡子と一緒ならば苦い草も食べられると考えたのだ。 妖怪の男は一家が再び黙って仕事を再開したのを確認すると視線を碁盤に戻した。 戻した時に、人間の男が再び餡子を食していたスプーンをまりさの体内に突き立て、パチリを黒石を置いた。 局面は既にヨセ。庭の雑草掃除はまだ半分も終わっていなかった。 おわり ──────────────── あとがきのようなもの どうやら前回の後書きが迂遠かつ紛らわしく、しかもネタのような文書のために皆様に勘違いを起こさせてしまったようなので、 自分も一度やりたかったネタと共にもう一度言い直しておきます 私はこのSSをもってゆっくり虐待SSを書くのをやめようと思います 理由としましては、リアルの事情、ネタ切れ、それに前ほど面白いと感じなくなってしまったことがあります こういうSS発表と言うのは、つまるところ「ちょっとこれ書いてみたんだけどさ、これ面白くね? 面白くね?」といった感じであると思っています それに他の人たちに「面白いな」「やるじゃん」「こうすればもっと面白くならね?」等といった反応をもらって愉しむ 他の人たちは分かりませんが、少なくとも私はそういう愉しみ方でした なんでわざわざ宣言をするのかと言うと、こうして言わないと自制が効かずにリアルをホッポリ出してまた再開しかねないからです 言いふらしておけばある程度の抑制が効くと思ったのです それでも読む側、見る側としては今後もゆっくり虐待界隈を覗こうと思っています 皆様が愉しんでいる様を見て、私も愉しんでいきます それでは皆様方、これまで私のような素人の拙作を見て頂きまして、その上感想まで頂いて、本当に有難うございました これまでに書いたもの ゆっくり合戦 ゆッカー ゆっくり求聞史紀 ゆっくり腹話術(前) ゆっくり腹話術(後) ゆっくりの飼い方 私の場合 虐待お兄さんVSゆっくりんピース 普通に虐待 普通に虐待2〜以下無限ループ〜 二つの計画 ある復讐の結末(前) ある復讐の結末(中) ある復讐の結末(後-1) ある復讐の結末(後-2) ある復讐の結末(後-3) ゆっくりに育てられた子 ゆっくりに心囚われた男 晒し首 チャリンコ コシアンルーレット前編 コシアンルーレット後編 いろいろと小ネタ ごった煮 庇護 庇護─選択の結果─ 不幸なゆっくりまりさ 終わらないはねゆーん 前編 終わらないはねゆーん 中編 終わらないはねゆーん 後編 おデブゆっくりのダイエット計画 ノーマルに虐待 大家族とゆっくりプレイス 都会派ありすの憂鬱 都会派ありす、の飼い主の暴走 都会派ありすの溜息 都会派ありすの消失 まりさの浮気物! ゆっくりべりおん 家庭餡園 ありふれた喜劇と惨劇 あるクリスマスの出来事とオマケ 踏みにじられたシアワセ 都会派ありすの驚愕 都会派ありす トゥルーエンド 都会派ありす ノーマルエンド 大蛇 それでも いつもより長い冬 おかーさんと一緒 魔理沙とドスまりさと弾幕ごっこ byキノコ馬 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/418.html
さんさくめ ちょっと ちょうしこきすぎた あいかわらず だぶん だよ by おれまりさ とか よばれたひと 「あ~楽しィ~!マジAQN最高だぜ」 今日もハッピーターンをつまみながらビールを飲んで、某ゆっくりスレを見て1日の疲れを癒す。 そんな私はゆっくり愛好家。壁紙はゆっくり、勿論デスクトップを飾るのはゆっくりデスクトップアクセサリー なぜならゆっくりは特別な存在だからです。 デスクトップ画面には50匹を超えるゆっくりが縦横無尽に飛び跳ねている。 この為にCPUをセレロンからクアッドに変えたのは言うまでもない。 「あ~かぁいいよ~ゆっくり~!俺の大根もおろせる頬でスリスリしたいよ~~!」 悲しいかなこいつらは与えられた画像とルーチンでしか動く事できない デスクトップを見てニヤニヤしてる俺。親が見たら泣くね絶対、まだAV見てる方が救いがあるよねウン しばし至福のゆっくりタイムを満喫してると、辺りが一瞬真っ白い光に包まれに遅れてゴロゴロと言う音が外から響いていた 「結構近いな。落雷で俺のゆっくり画像が消えちまったら困るな。可愛いゆっくりちゃん、少しの間会えないけど我慢しててね」 そう言ってスタートボタンにポインタを合わせた瞬間であった ガラガラガッシャーーン!! 眩い閃光と共に耳をつんざく爆音が俺の部屋を襲った 同時に激しい衝撃で俺の体は吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた 「うぉ…いってて、本当に落ちるとは…はっ俺のゆっくり1号カスタムは!?」 自慢のゆっくり専用PCを見やると本体は白煙を上げモニタは真っ暗な画面だけを映していた 「なん…だとっ!?」 何という事だ...給料の3か月分を費やして組み上げたゆっくり専用PCが!? 1年掛けて関連サイトやアップローダを暇さえあれば業務中でも探して集めた画像がッ!? 通勤中に思いついてにやけてしまう程の思いのたけを綴ったゆっくりとの妄想ライフSSががっ!? おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました 3行の文が俺の中を渦巻いていた。 ゆっくりが居なくて何の人生を楽しめようか 目の前が真っ暗になり俺の人生も真っ暗にあんりかけたときであった ビッ ピーー 聞きなれた起動のビープ音がPCから聞こえた 「良かったPCは生きてる!」 後はデータが生きてるの確認するだけ OSのロゴが消えるとと何時もの乱雑なデスクトップ画面が映った 相変わらず暢気にゆっくり達が跳ねまわっている。よし問題ない 後はマイゆっくりフォルダを確認するだけだ。ポインタを置くと目を瞑って祈る思いでクリックする 「…。」 うっすら目を開けると白い背景にいくつものアイコンがいくつも見えた。 良く見ると虫食いの如く所々有る筈のフォルダが消えてる 「ま…PCが生きてるなら儲けものだな、ハハ…」 とりあえず飲み物をとって気を落ちつける事にした。もう流れちまった画像の事を考えると飲まないと涙が零れそうだからだ 「さてと…他の方は…ん?」 可笑しい…さっきまで有った筈のフォルダや画像のアイコンまでが消えている 「ま…まさかウィルス!?」 だがウィルスソフト反応してない。じゃあ一体なぜ?Why? 「ん…なんだこりゃ?」 何故かデスクトップアクセサリーのゆっくりれいむが妙な行動している。 AAでよく見るむーしゃむーしゃと物を咀嚼するアクション。 こんな動きしたか?徐にポインタを近づけてクリック するとれいむが口からアイコンを吐き出した。こ…これは!?タイトル名を見ると私的神画像の1つ!? 「れいむのしょくじをじゃましないでね!」 スピーカーから聞こえる筈のない物が聞こえた。 それだけではない他のゆっくり達を見るとデータにない筈の動きをしている 「これは一体?おまえはだれなんだ!?」 「れいむはれいむだよ。ばかなの?」 いや待て落ち着け……これは夢だ。夢でないとしたら幻覚だ。頬をつねろう 「あだだだだっ!?」 本物だ。じっくり観察してみるとデスクトップ上ではゆっくり達が思い思いに動いていた 数匹で歌を歌ってる者・追いかけっこをする者・フォルダのアイコンに顔を突っ込む者、絵やSSをみて想像するしかなかった光景が今ここに存在している 「フ…フハハハハハ!見ろ全国の『お兄さんども』よ!!俺はゆっくり愛好家達が誰もが羨む夢『ゆっくりと暮らす』をこの手に手に入れた」 「うるさいよ!しょくじちゅうなんだからゆっくりしずかにしててね!それとごはんがたりないからすぐもってきてね!」 「ああ・・・ハイハイゴハンね。ゴハン?お前ら電子データの癖に物が食えるわけないだろ」 「なにいってるの?おっきいおさらのなかにあるのがれいむのごはんだよ!」 よく見たら開いているマイゆっくりフォルダの中に多くのゆっくりが集っている。そいつら一様に何かを咀嚼している。ま…まさか!? 「こいつらファイルを食ってる!?」 何と気づいたらマイゆっくりフォルダの画像やテキストファイルの殆どが消失してる。こいつは不味い! 「ば・・・ばかたれ!今すぐ辞めろ!!」 「これはれいむがみつけたごはんだよ!ゆっくりできないおにいさんはきえてね!」 叫ぼうが一向にゆっくりはやめる気配がない。止めようにも画面の向こうの存在に干渉することなどできやしない。 「そうだ?さっきれいむに…」 フォルダでファイルをむさぼってる一匹のゆっくりをクリックする 「ゆ!?いたいよ!まりさをはなしてね」 ビンゴ!やっぱりそうだ。こいつらはデータなのでPCから操作で干渉できる 「おにーさんまりさをはなしてね!」 そのままドラグしてゴミ箱へドロップ 「ゆ゛ーーー!」 仲間の叫び声に気付いた他のゆっくり達が一斉に振り向く 「ゆっ!おにいさんまりさをかえしてね!」 「ここはれいむたちのおうちだよ!かってにいじらないでね!」 口々に非難の声をあげるれいむたち。 余りの事にこいつらの本質を忘れていた。 自分勝手で頼みもしないのに居着いてまるでそこの主の様に振舞う そして俺はお兄さん ならば成すべき事は一つ… 「おにいさんれいむをむししないで…むっぐ!こんなにごはんいらな゛っ」」 手始めにバックアップ済みの大容量データを放り込んであげた。 3GBもする御馳走を貰ったれいむは歓喜のあまり白目を剥いて気絶してしまようだ 「て゛い゛ふ゛ぅぅぅぅぅ!!」 れいむのつがいらしきまりさの口にはどっかで拾ったゆっくり.zip .exeとかいう何か怪しい香りのするファイルを御馳走させてあげた 「や"めでっ!?むーしゃむーしゃしあわせー♪」 「アレ何ともないのか?」 「ゆ…ゆっくゆっくゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりっくりっくりっくりっくりっくりっくりりりりりり」 「あ…やっぱりヤバいファイルだったか」 まりさは壊れた録音機の如く奇声を発しながら画面上を狂ったように走りまわる 今度は呆気にとられて動けない3匹のゆっくりを範囲指定して圧縮ソフトのアイコンに放り込んであげた するとデスクトップに3匹のゆっくりがいびつに融合した真四角なアイコンがあらわれたではありませんか 「き゛ほ゛「い゛や゛あ゛ぁぁ「は゛な゛れ゛て゛ぇぇぇぇ」ぁぁぁ」ち゛わ゛る゛い゛ぃぃ」 ゾクっとする様な不気味な声を立ててガタガタ動いている しかし本当の悪夢はこれからだ。ゆっくりデスクトップアクセサリの設定画面を起動してRemilaと名の付いたファイルを起動させる。 「うー?」 他のゆっくり達の顔が凍りつく。まさかれみりゃまで出てくるとは思いもしなかったろう 突如出現させられて戸惑っているれみりゃ。だが周囲を見回すと事態を把握したのかにっこりと笑う 「たべちゃうぞー!れみりあ うー!」 ようやく危機を悟り逃げ回る残りのゆっくり達。 「れ゛み゛り゛ゃ゛た゛ぁぁぁぁぁあぁ!!」 「い゛や゛た゛あ゛ち゛に゛た゛く゛な゛い゛ぃぃぃぃ」 半狂乱になって画面を逃げまどうゆっくりの様子は滑稽なものだった。 「ハハハハ!見ろ、人が…じゃなくてゆっくりがゴミの様だ!」 れみりゃに中身を食われてデリートされる物 画面端に逃れようとして将棋倒しになり押しつぶされる物 やけくそになったのか他の仲間を押し倒して性行為に及ぶ者 とにかく隠れようと自分からゴミ箱につっこむ者 宴は空が白むまで続いた。騒動が収まった頃にはデスクトップには数匹のゆっくりがポインタから逃げるように画面端で縮こまっている。 まだ続けたいところだが今日は出勤日、眠い目を擦り身支度を整え朝飯を取る。 今まで起こった事が夢のようだった。だけど現実なんだよこれが 出かけるので電源を消そうとPCの前に行く 「お゛ね゛か゛い゛で゛す゛ゆ゛っく゛り゛さ゛せ゛て゛く゛た゛さ゛い゛…」 その言葉を聞いて電源を切る手を止めた 「そうか帰ったらあそんであげるからそれまでゆっくりしていってね!」 俺は軽い足取りで家から出てゆく。何か聞こえた気がするけど気のせいだろう このSSに出てくる固有名称・団体名・商品名・企業名は実在の物とは無関係です このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1852.html
ゆっくりと共同生活 ソファにもたれてテレビを見る俺の周りで、ゆっくり一家がくつろいでいる。 「ゆゆぅ……ゆぅ……」 鼻息を漏らして寝ている、拳ぐらいの子まりさもいれば、 「ゆー……ゆっくち! ゆっくち!」 「ゆんゆん! ゆきゅっ♪」 にらめっこをして、にこにこ笑っている、ピンポン玉ぐらいの赤れいむもいる。 そしてあぐらをかいた俺の膝の上には、母れいむと母まりさが居座る。 「ゆぅ……すーりすーり! ……ゆぅ」 呼吸に合わせておだやかにふくらみ、ときどき頬ずりしている。 その様子は、幸せそのもの。 「れいむ、とってもゆっくりしてるね……」 「ゆー、まりさもだね……」 「赤ちゃんたちも、ゆっくりしてるね……」 「ゆっくち!」 ゆーゆーという相槌が上がる。あふれんばかりの団欒っぷり、ラブラブっぷりだ。 二匹の母親は、ほっぺたをもちっと押し合いながら、俺を見上げる。 「おにーさん、ありがとうね……」 「こんなにゆっくりできるお兄さんのおうちにいられて、れいむしあわせだよ!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「そうだね」 俺は左右のゆっくりを交互に撫でる。 饅頭たちがぽよぽよと嬉しそうに揺れる。 「ちょっと降りてな。飲み物、持ってくるから」 「ゆうっ!」 二匹は、ぼよんと跳ねて、だぷっとカーペットに降りる。 バスケットボールぐらいある成ゆっくりだから、かなりの存在感だ。 「おかーしゃんだ!」 「まりさとゆっくちちてね!」 「だめだよ、れーむとゆっくちちゅるの! ゆっくち!」 集まってきた子供たちが、ゆっくちゆっくち、と声を上げる。 「ゆー、みんなでゆっくりするよ! おちびちゃんたち!」 「ゆーん!」 「おかーしゃん、ありがちょう!」 「ゆっくちちゅるー!」 母れいむもご満悦だ。すりすり、すりすりと頬をこすり付けあう。 ゆっくりにとって、「ゆっくり」は命のことば。 ゆっくりするのが大好きだし、それを言うだけでも幸せになれるのだ。 これからの人生で、ずうっと使うことば「ゆっくり」。 だから、なんでもないときでも、どんどん口にしてしまう。 ゆっくりを飼っていると、一日に千回ぐらいゆっくりを聞くことになる。 もちろん飼い主の俺も、その言葉が大好きだ。 そうでなければ、ゆっくりなんか飼ってられない。 「おかーしゃん!」「まりちゃも、まりちゃもー!」 机の陰や棚の下からも、ぞろぞろ、ころころと赤ちゃんたちが出てきた。 母れいむだけではすりすりが追いつかず、母まりさも出動する。 「みんな、まりさもゆっくりしてあげるんだぜ!」 「わーい!」「まりさおかーしゃん、だいちゅき!」「すーりすーり♪」 盛大なゆっくり大会になった。 そこらじゅうが小さな丸いころころで一杯。まるでスーパーのトマト棚だ。 それもそのはず、うちには30匹以上の子ゆっくりたちがいるのだ。 これだけ多いと、親たちも数を把握していない。 俺は立ち上がりながら、三匹ほどの赤れいむと赤まりさを摘み上げた。 広げた手のひらに乗せて、なるべく周りが見えるように運んでやる。 「ゆゆっ? ゆっくりのぼっていくよ!」 「おちょら、おちょら!」 「すーいすーい!」 喜ぶ赤ちゃんたちを連れて、にぎやかなゆっくり大会から離れ、キッチンに入る。 引き戸を閉めて、流しへ向かった。 手鍋をコンロに置き、ころころんと三匹を入れる。 「ゆっくちころがるよ!」「まぁるいおへやだよ!」 「はーい、おちょこだよー」 キャッキャと喜ぶ赤ちゃんたちの真ん中に、お猪口をひとつ、逆さまにして置いた。 「おちょこ、おちょこ!」「れいむたちみたいだね!」 形が気に入ったのか、赤ちゃんたちはさらに喜ぶ。 俺はカチンとコンロの火をつけて、食器棚へ向かった。 「ゆっ? ぽかぽかだよ!」 「あっちゃかくなってきたよ!」 グラスを選び、冷蔵庫から氷を取り出して、入れる。 スコッチの蓋を開けて、注ぐ。 トクトクと溜まる琥珀色の液体を、適当なところで止めて、蛍光灯にかざした。 いい色だ。そんなに高い酒じゃないが。 「ゆっ、ゆっ、あちゅい、あちゅいよ!」 「ゆっくちできない、ゆっくちできないよ!」 「つまみはー、っと」 水割りにしてから、菓子箱を漁った。いいものがない。 食べかけのスナック菓子があったが、開けたらしけっていた。 「あぢゅいい! あぢゅいよぉぉ!」 「たしゅけて、おにーしゃん! かぢだよぉぉぉ!」 「ちんぢゃう、まりちゃ、ちんぢゃうう!」 ぴょむ、ぴょむ、と小さな音の聞こえる鍋の横を通って、冷蔵庫の前に戻った。 その上のかごを下ろして調べると、チキンラーメンが見つかった。 ちょっと塩分とカロリーが高すぎだが、まあ仕方ない。 俺はチキラーを割って、皿に盛った。 饅頭側の焼ける香ばしい匂いが漂い始めている。 「どいて、どいでねっ!」 「れいむの! れいむのゆっくりぷれいちゅだよ!」 「ゆーっ、まりちゃのだよ! どかないとまりちゃがちんぢゃうよ!」 ぽにょん、ころん、びちょっ、ぷにょっ、びぢょん ぢゅうぅぅぅぅぅっ……。 「ゆぎゃぁぁぁぁ!」 「おかあぢゃぁぁぁん!」 最後はもちろん、ゆっくりたち用の飲み物だ。 俺はれいむやまりさたちの喜ぶ顔が見たくて、二日に一度はオレンジジュースをやる。 もちろん無果汁の激安品だが、これほどゆっくりを可愛がっている飼い主はそういまい。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆぢっ、ぢゅっ」 「もっちょ、ゆっくちちたかっ……ばぢゅっ」 ゆっくりは便利だ。セリフで焼け具合がわかる。 広い皿にオレンジジュースを満たして準備を終えると、ちょうど赤れいむたちの断末魔が聞こえてきた。 俺は火を止め、手鍋を覗いた。 赤れいむと赤まりさが一匹ずつ、焼きあがっていた。 全身ほどよく焦げ目がつき、ほこほこと湯気を立てている。 開いたままカリカリに焦げた口の中からは、沸騰した餡子がミチミチと漏れていた。 お猪口の上という、一箇所だけの安全地帯を巡って、壮絶に体当たりしあったのだろう。 そのゆっくりプレイスには、生き残ったまりさが一匹。 五分前まですりすりしあっていた姉妹たちの、凄絶な死にざまに、恐怖の顔で固まっている。 最愛の姉妹たちとの醜悪な争いは、無垢な心に、一生残る傷をつけたことだろう。 もっともその一生とは、あと一分もないのだが。 「ゆっ?」 わなわな震えていたまりさが、ふと俺の顔に気づいた。 その顔がくしゃくしゃと崩れ、愛くるしい泣き顔になる。 「ゆっ……ぇぇぇん! ゆえぇぇぇぇん! ゆえぇぇぇぇん!」 「おうおう、まりさ」 俺は手を伸ばしてまりさを救ってやる。ぴょんと飛び乗った赤まりさが、手のひらにすりすりする。 「れいむもまりさも、ちんぢゃったよお! バチバチってはねて、ちんぢゃったよお!」 「よしよし、こわかったな……」 「おにーしゃん、おしょかったよぉぉぉ! もっとはやくたちゅけてよぉぉ!」 生き残ったまりさの、涙に濡れた頬。 そのプニプニした感触を、指でつついて楽しみながら、俺は声をかける。 「ごめんな……俺、おまえたちのことが大好きなんだわ」 「ゆぇぇぇぇん! ゆぇぇぇぇぇん! ……ゆっ?」 まりさが不意に、ぴたりと泣き止む。 その目が、口が、恐怖に見開かれる。 つぶらな二つの目に映るのは、大きく開かれた俺の口腔。 白く硬い歯並び。 はむっ。 <なにちゅるのっ? ゆっくちやめちぇね!> 閉じた口の中で、もたもたと小さな球が跳ね回る。耳骨に叫びが伝わってくる。 <ちゅぶれりゅ! まりちゃ、ちゅぶれりゅよ! だちてね! ゆっくちだちてね!> ぱくっ、と口を開けてやった。「ゆっ!」と赤まりさが飛び出してくる。 すかさず俺はそれを手のひらで受け止める。 ぺちゃん、と着地したまりさが、振り向いてほっぺたをふくらませた。 「ぷくぅううう! おにーしゃん、ゆっくちあやまってね!」 「はっはっは、ごめんごめん」 「まりちゃ、こわかっちゃよ! おにーしゃんのばか! ばか!」 「そっか、こわかった?」 「ちゅっごくこわかったよ! おかーしゃんにちかってもらうからね!」 「ほんとごめんな。もうしないからな」 指先でころころとくすぐってやると、黒帽子のちいちゃな金髪まりさは、 「ゆふっ、わかればいーよ♪」 と微笑んだ。 「ありがとな」 俺はそう言うと、そのまりさをもう一度口に入れて、前歯でプチンと五分の一ほど齧り取った。 そして、凄まじい悲鳴を上げて舌の上でピクンピクンと跳ね回る感触を楽しんだ。 焼けまりさと焼けれいむをつまみ、口に入れてもぐもぐと咀嚼しながら、酒とつまみとオレンジジュースのトレイを手に取った。 それから、引き戸を足で開けてリビングへ戻った。 遊んでいた親ゆっくりたちが振り向く。 「ゆっくりよういしてくれた?」 「まりさたちも、のどがかわいたんだぜ!」 その声が聞こえたのかどうか、口の中の生まりさが、ビクンと強く跳ねた。 俺はそれをよく噛んでこね回し、とても甘い餡を味わった。 ごくんと飲み込む。 「おう、お待たせ。いつも通り五匹ずつね」 そう言って、床にトレイを置いた。 「みんな、ゆっくりのもうね!」 「「「ゆ~~~!」」」 母れいむの指示通り、赤ゆっくりと子ゆっくりたちが広い皿の周りについて、行儀よくぺーろぺーろと舐めだした。 甘いジュースに喜んで、ぱあっと感動の顔になる。 「「「「ちあわちぇー♪」」」」 涙を流し、ぷるぷる震える。母れいむが俺にすりすりする。 「こんなにおいしいじゅーすをのめて、れいむたちほんとにしあわせだよ!」 俺はいやいやいやと手を振って聞き返す。 「俺の幸せはおまえたちのゆっくりだよ。どう、子供たちはみんなゆっくりできてる?」 子供たちを振り向いたれいむが、力強くうなずく。 「ゆっくり! ゆっくりしているよ!」 「いっぱいいるけど、みんな大丈夫?」 「だいじょうぶだよ! このおうちは、こどもがいっぱいふえてもゆっくりできる、ふしぎなゆっくりプレイスだよ!」 「そうかあ、よかったなあ」 俺はにっこり笑って、腰を下ろす。 「これからも、どんどんすっきりして子供産んでいいからな」 「ゆっ、ありがとう!」 「ありがとうだぜ!」 「「「ありがちょうね!」」」 子供たちもいっせいに声を上げる。 俺は水割りを口にして、残っていた甘味を飲み込んだ。 fin. ============================================================================= 何かこう自然体のホラーを書きたかった。 YT このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/404.html
ある所に、とてもみじめなゆっくりまりさがいました。 ごはんをたくさん食べて、寝て……まだ小さいので子供はいませんし、家族ともずっと昔に別れてしまいましたが、普通のゆっくりとほとんど変わらないゆっくりライフを営んでいました。 周りのゆっくりとほとんど変わらない生活をすごしているのに、なぜこのゆっくりまりさはみじめなのでしょうか? それは、帽子をなくしてしまったからです。 ゆっくりは、生まれた時から帽子やリボンなど、何らかの飾りを身に付けています。 れいむなら赤いリボン、ちぇんならキャベツ……もとい帽子、みょんならキクラゲ……いや黒いリボン、ゆかりならドアノブ……違う。帽子、そして、まりさならとんがり帽子。 種族によって違いはありますが、必ず何かを付けています。 極めて稀な例で、とんがり帽子をかぶったれいむ等といった奇形も誕生しますが、それにしても飾りを身に付けているのには変わりありません。 ですが、みじめなゆっくりまりさにはリボンや別種の帽子すらありませんでした。 飾りは、ゆっくりが生きていくのに必要な器官ではありませんが、だからと言って必要ないものでもありません。 飾りを身に付けている事で、ゆっくりはゆっくりとして、ゆっくりできるのです。 もちろん、みじめなゆっくりまりさは、本当の意味でゆっくりする事はできませんでした。 そのため、飾りをなくしたゆっくりは、代わりの飾りを探します。 ――飾りさえ持っていれば、もうこんなみじめな思いをしなくて良い。ゆっくりできる。 その思いから、ゆっくりなりに必死になります。 探した結果、自分の飾りが見つかれば良いですが、どうしてもない時は別のゆっくりの飾りを奪ってでも手に入れようとします。 ですが、奪われた方のゆっくりにとっては、たまったものではありません。次にみじめな思いをするのは、奪われたゆっくりなのですから。 奪おうとするゆっくりと、奪われまいと警戒するゆっくり。 本来ならば一緒にゆっくりできる仲間と、そんなゆっくりできない関係になってしまうため、飾りのないゆっくりはみじめなゆっくりなのです。 みじめなゆっくりは、他のゆっくりよりもほんの少しだけ早く起きます。 近くに寝ているゆっくりがいたら、その飾りを奪うためです。 みじめなゆっくりが、洞窟に入っていきました。 どうやら、まだ寝ているゆっくりを見つけたのでしょう。ゆっくりとは思えないほど慎重に、音を立てない様に注意して入っていきます。 「ゆっ……! ゆっ、ゆー!!!」 「ゆっくりしね!!!」「しね!!!」「ゆっくりでていけ!!!」 どうやら見つかったみたいですね。 激怒したゆっくりれいむ一家に追い立てられて、ほうほうの体で逃げていきました。 母ゆっくりは限界までふくらんで、威嚇しています。石を口にくわえて投げつける子ゆっくりもいます。 目の前で子供を殺された時ですら、ここまでの攻撃はしないでしょう。 ゆっくりの飾りを盗むという事が、どれほど重大な問題なのかをうかがわせる光景です。 みじめなゆっくりは、他のゆっくりよりもほんの少しだけ早く食事を終えます。 近くに飾りが落ちてないかどうか探すためです。 先ほど追いかけられたみじめなゆっくりは、へとへとになりつつも食事を探しだしました。 この辺りは、捕食種であるゆっくりれみりゃもゆっくりフランもおらず、エサの量が多いため、みじめなゆっくりでもたらふく食べる事ができます。 「うめっ! めっさうめぇこれ!」 普通のゆっくりまりさと変わらない下品な言葉を発しつつ、たくさんの草や虫を食べていきます。 あらかた食べ終わったみじめなゆっくりは、それほど休まずに動き出しました。 食後の散歩でしょうか? 違います。どこかに飾りが落ちていないか、探しているのです。 みじめなゆっくりは、なめるように周囲を探していきます。 時には、遠出をしてでも見つけ出そうとします。とはいえ、ゆっくりなのでそれほどの距離を移動する事はできません。 みじめなゆっくりが、ゆっくりと戻ってきました。 どうやら飾りは見つからなかったらしいですね。寂しそうにうつむいています。 そんな、落ち込んでいるゆっくりの耳(あるのかは不明ですが)に、別のゆっくりたちの声が飛び込んできました。 ゆっくりまりさとれいむの集団です。このゆっくりたちは、全員帽子とリボンを付けています。 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくり……していってね!!!」」」 嬉しそうにあいさつするみじめなゆっくりに対し、姿が見えた瞬間、少し距離を置いてあいさつを返すゆっくりたち。 あいさつをした相手と遊んだ上、そのまま家におじゃまして一緒に寝る事もあるほどに種族仲の良いゆっくりにしては、珍しい光景です。 それもこれも、みじめなゆっくりが飾りを身に付けていないからです。 「ゆっくりあそぶよ!」 「なにしてゆっくりあそぶ?」 「ちょうちょさんとおっかけっこしよう!」 「「「ゆっくりあそぼうね!!!」」」 楽しそうに遊ぶ内容を話し合い、近くに来たちょうちょを追いかけて遊んでいます。 みじめなゆっくりと、普通のゆっくり。 一見仲良く遊んでいますが、実はお互いに非常に警戒し合っています。 「ゆ”っ!?」 「まりさ!」 「……ゆっくりころんだ!」 「だいじょうぶ? ゆっくりおきあがってね!」 「ゆっくり……ゆぎゅぅぅぅ!」 「……ゆっくりおきあがるのてつだうよ!」 「ゆっぐ、いらないから……ゆっぐり、はなれてね!!!」 起き上がるのを手伝おうとしたみじめなゆっくりを、全力で振り払おうとするゆっくりまりさ。 当然です。みじめなゆっくりは、助ける事にかこつけてまりさの帽子を奪おうとしていたのですから。 ちなみに、この時他のゆっくり達はただ眺めているだけです。 どちらのゆっくりが帽子を被るかによって相手への対応が変わるため、うかつに動く様な事はできないのです。 元々のみじめなゆっくりが弾き飛ばされ、木にぶつかって止まったのを見届けてから、また皆で一緒に遊びます。 心配して近づくゆっくりはいません。近づいたら最後、飾りが奪われる可能性があるからです。 ゆっくり達は、遠くから声をかけます。 「ゆっくりだいじょうぶ?」 「ゆっくりこっちにきてね!」 「いたかったら、そこでゆっくりやすんでね!」 「……ありがとう、でもだいじょうぶだからいっしょにゆっくりあそぼうね」 みじめなゆっくりは、優しく問いかける仲間に対してにこやかに返事をしつつ、元気に飛び跳ねながら仲間達の元に行きました。 「ゆっ! おひさまがかくれちゃうよ!」 「たいへん! ゆっくりかえらなきゃ!」 「みんなでゆっくりかえろうね!」 西日が傾いてくると、ゆっくり達は帰宅します。 夜になると、ゆっくりれみりゃやゆっくりフランといった、捕食種が現れるからです。 「ま、まって! もっとゆっくりあそぼうよ!!!」 そんな中、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら皆を引き止めるみじめなゆっくり。 遊んでいる最中はスキを見つけられなかったらしく、飾りはありません。 「ごめんね! でもゆっくりかえらないとれいむがおかあさんにおこられるの!」 「まりさもおこられるから、みんなでゆっくりかえろうね!」 ねー、と声をかけ合うゆっくり達。 みじめなゆっくりが何と言おうとも、普通のゆっくり達は聞き入れず、仲良く帰っていってしまいました。 「まっでー! もっどゆっぐりじようよー!!!」 最後には泣き叫びながら引き留めようとするみじめなゆっくりですが、皆でがっちりと固まって帰ってしまいました。 これでは、帰ろうとするゆっくりの背後から奪い取る事もできません。 結局、みじめなゆっくりは飾りを奪う事はできませんでした。 みじめなゆっくりは、他のゆっくりよりもほんの少しだけ遅く眠ります。 近くにゆっくりが寝ていたら、その飾りを奪うためです。 皆が帰るのを眺めていたみじめなゆっくりも、気を取り直して巣に戻りました。 いつまでもゆっくりしていると、捕食種の餌食になるからです。 ゆっくりと巣に戻り、巣に戻ったらゆっくりして、そのまま眠りに付きます。 「ゆぅ……ゆ……ふぅ……ゆー……ゆっ!」 完全に眠ったと思った瞬間、飛び起きてゆっくり外へと出て行きました。 みじめなゆっくりは、そのまま朝とは別の洞窟に入っていき、何も被らずに出てきました。 自分に合う飾りがなかった様です。 自分と同じサイズのものでなければ、周りから飾りとして認められません。 それでは、奪い取っても意味がありません。 とぼとぼと、みじめなゆっくりが自分の巣に帰ろうとしている最中、話し声が聞こえてきました。 「……よ、ほんとうに……」 「……ね、ゆっくり……」 何事かと恐る恐る覗いてみると、先ほどまで遊んでいたゆっくり達のうち、2匹が楽しそうに談笑していました。 どうやら巣が近くにあった様です。体をくっつけて「ゆぅ~♪ゆっ♪」と歌ったりもしています。 みじめなゆっくりが声をかけようと近づくと、話の内容が聞こえてきました。 「ぼうしないこ、ずっとれいむたちのりぼんみてたよね」 「まりさのぼうしをとろうとしてたよ」 「ぼうしなくてかわいそうだとおもったからゆっくりしてあげたのに、だめなこだよね」 「だめなこだよね、ゆっくりできないこなんだよ、あのこ」 「いやだよね、ぼうしないこはゆっくりしてなくて」 「ほんと、ぼうしないとゆっくりできなくなるんだね」 「きっと、ちかづいたら『ぼうしとるぞー!』っておいかけてくるよ」 「おお、こわいこわい」 みじめなゆっくりは、そのまま動けなくなってしまいました。 昼間に遊んだゆっくり達が、同情のみで遊んでいた事を知ってしまったからです。 その日以来、みじめなゆっくりを見る事はありませんでした。 ――いかがだったでしょうか。 帽子やリボンがないだけで、ゆっくりはこれほど惨めな思いをする事になるのです。 何としても飾りが欲しいと思うゆっくりの思いを理解していただけたでしょうか。 ただ、ここまで見てきて疑問に思われた事があるでしょう。 生きているのじゃなくて、死体から帽子なりリボンを奪えば良いんじゃないか? という疑問が。 確かにその通りです。 ですが、ゆっくりは、どれだけ惨めな思いをしても仲間の死体から飾りを奪う事は決してしません。 それをしてしまえば、皆に殺されてしまうからです。 バレない様にこっそり奪えば良いという意見もあるかもしれませんが、死体の飾りには死臭が付いているため、どれだけこっそりしていても絶対にバレてしまいます。 頭の良いゆっくりが、死臭を消すために肥溜めに落としたりした事がありましたが、そこまでしても死臭を消す事はできませんでした。 ちなみに、そのゆっくりは制裁として肥溜めに落とされ、フタをした上に重石を乗せられました。 ゆっくりにとって、飾りはそこまで重要なものなのです。 だから、ゆっくりにどれだけ腹を立て、殺したいほど憎くても、また、殺したとしても、決して飾りだけは取ってはいけません。 飾りを取った人間に対し、ゆっくりがどれほどの憎しみを抱くか……考えただけで恐ろしくなります。 ゆっくりだから大した事はないと思ってはいけません。 奴らは、飾りを取られた恨みを決して忘れず、どこまでも追いかけてくるからです。 ……なぜ私がここまで怯えるのか、不思議だったり情けなく思ったりする方がいるでしょう。 ですが、これは全て事実なのです。 奴らは、普段は鈍重でボンクラで一匹位いなくなっても気にしない間抜けどもの癖に、飾りを壊した奴の事は決して忘れません。 何が出来る訳じゃない、ただただ攻撃を仕掛けてきて殺されるだけなのに、死体の山を築き上げたとしても諦めずにずっと付いてくるのです。 私は、恐ろしい。 ……あんた、笑ったか? 出来の悪いホラーを見るような態度で笑っただろう。 いや、笑うのも分かるさ。私だって、ゆっくり程度に怯える奴がいたら、笑うさ。 でも、この音を聞いてみろよ。後ろからずっと、返せ返せって呟きながら、べちゃべちゃとついてくる饅頭どもの音をさぁ! 殺すのは簡単だよ、こんな奴ら。無抵抗に近いんだからな。ぶつかってきても痛くも何ともない。 ナイフとかのこぎりとか物騒な器具がなくても、ただぶん殴れば終わるさ。 でも、ずっとついてくるんだよ。返せ、べちゃ、返せ、べちゃ、返せ、べちゃって、ついてくるんだよぉ! 職場でも家でも風呂でもトイレでも、ずっとついてくるんだよぉ!!! ……ほら、今も聞こえるだろう? 奴らの声が。足音が! べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ べちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せべちゃ返せ ――ゆっくりを虐待している皆さん。 ――くれぐれも、奴らの飾りだけは盗られないよう、お気をつけ下さい。 ――さもなくば、彼のようになりますよ。 この話の骨子は、 316のレスを見て思いつきました。多謝。 でもなんで、こんな話になったんでしょうか……自分でも分からないです。 ところで、 863……本当に、怖くないですか?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1340.html
弱目のゆっくりゃ虐待SSです。ゆっくりゃ虐待が嫌いな人は見ないで下さい。 じぶん設定(笑)がいっぱい出てきます。 れみ☆りあ☆う~! 昼に公園を歩いてるとれみりゃがついてきた。 「うーうー☆おにいさんこっぢむいて~」 見ると所どころ汚い。どうやら公園の傍の砂場で遊んでいたようだ。 その顔は朗らかな笑顔で目は糸のようだ。 人の子供ほどの背なのに顔はやたら下膨れでほっぺたがやや赤い。3頭身くらいだろうか。 背中には羽と思しきものがついている。そのくせババクサイ服だ。 頭には大阪ドームみたいな帽子が付いている。髪は灰色のくすんでぼさぼさだ。 それはまぎれもないゆっくりれみりゃ(体付き)だった。 「お嬢ちゃん、お名前は?」 「うー!れみりゃだぞぉー!」 この町ではめったにゆっくりと出会わないから珍しく思ったので家に連れて行くことにした。 「そっか、れみりゃ。」「うー?」 ゆっくりゃは名前を呼ばれると頭を傾げてこっちに糸のようだった目を見開く。 まるでルビーのような瞳に、俺は胸を高鳴らせた。 「お兄さんと一緒にあそぼっか?」 「う?・・・うー☆あそぶぞー☆」 ゆっくりゃはいとも簡単に誘いに乗ってくれた。 それから俺とゆっくりゃは公園の遊具で遊んだ。ブランコで膝の上に乗せてこいでやると、始めは涙目で 怖がってしがみついた。 「うー!ごわいよぉ~さくやぁん!」「大丈夫だよ」 それから慣れると「うー!」と嬉しそうにした。 次に滑り台。俺は下でゆっくりゃを待ち構える。 目をつぶりながら震えているゆっくりゃは怯えながら滑り台の階段を上って 「う~こわいよざくや~」 とプルプルしている。 「大丈夫だよ!お兄さんを信じてね!」 と笑顔で言ってやると 「う~?・・・うぅ~ん!!」と否定だか肯定だか字面だけでは捉えにくい同意をしたゆっくりゃは 口をへの字に曲げて眉間に皺を寄せて意を決した顔で滑り台からすべり降りた。 ザシュッ! 俺は降りてきたゆっくりゃを優しく抱えてやる。 「・・・?うあうあ♪おにいさんありがとぉ~だぞぉ~☆」 と目をあけたゆっくりゃはすっかり俺を信じてくれたようだ。 「お腹減ったね、れみりあ?」 「うー!おなかすいちゃったぞー!ぐぎゅるるだぞー☆うあうあ♪」 とヒゲダンスをしながらゆっくりゃは俺を見つめてくる。 その表情はすっかり結婚生活のマンネリを旅行で打開した後の車内での妻の表情だ。 といってもわかりにくいか。とにかく一人前の女の表情をこの肉まん妖精ゆっくりゃはしていた。 その後うあうあ言いながらよちよち付いてくるゆっくりゃと共に家に帰った。 途中でコイツは蝶々を追っかけたり花を摘んだり大忙しだったが俺はゆっくり待ちながら手を引いて促した。 家に帰るとゆっくりゃは嬉しそうに踊りだす。 「うっうーうぁうぁ☆うれしいぞ☆たのしーぞ☆おにいぁんのおうぢにやってきたぞぉ~~~♪」 ぷりぷりとお尻をふって踊る。 立ち止まっては羽をピョコピョコ♪ と動かしてはこっちを チラッ と見て「うー♪」としなだれる。 これを基調にした踊りのようだ。 所々「うっううー♪」「ぎゃおー♪」「うぁうぁ♪」「シャクヤぁん♪」 と合いの手を入れてくるっと回って「だいしゅきー☆」と色目を使ってくる。 正直いってウザイ。今すぐ色目をレイプ目にしたい衝動を抑える。 どうやらこのゆっくりゃは数少ない繁殖期にあるらしい。俺を交尾相手と見なしたってことか。 とにかく今はこの面白い踊りを見ながらPC起動。 よし、ゆっくりゃをちょっと虐めてやろう。 「れみりあ!こっちちょっときてごらん。」 「う~?なぁに?おにぃ」いつの間にか「おにぃ」と馴れ馴れしくなっているゆっくりゃに不快感を感じたが我慢。 目が本当にルビーみたいな綺麗な真紅色をしているがこれは肉まんだ。ステーキのテカリと同じ類なのだ。 俺は動画サイトである動画を選んだ。これをゆっくりゃに見せよう。 「面白いよ。」「う~?おもいおいお?」どうやら俺の横顔に見とれてるらしい。イライラ。 「これ見てごらん」そこには綺麗な風景画が動画に映っていた。 「う~♪きれーだぞぉ~♪うー・・・」 ゆっくりゃは見とれているようだ。俺はニヤニヤしながらゆっくりゃを観察する。 そう、これはゆっくりゃを驚かせるためのびっくり動画、風景画が突然血まみれの女の絵と絶叫する声が流れるものなのだ。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」 「うあああああああああ”あ”あ”!!」 ゆっくりゃはびっくりして目を大きく見開き後ろに尻餅をついて倒れた。その際に後ろのタンスに頭をぶつけた。 「う”あ”!!いだいどおおおおおおお!!!びぇえええええええええええええええええん!!!びぇえええええええええええええええん!!!! いだーーーいいいいーーーーーーどおおおおおおおお!」 うるさい。ゆっくりゃは目から肉汁の涙を流しながら顔を真っ赤にしている。 目は><こんな感じで後ろの羽がパタパタしている。意味ないのにw 「おにーざん!どーじでデヴィをおどーがずぅんだどぉ~!!うあああああんざぐやー!ざぐやー!きーーーー!!!」 うるせえな。これで殴ったらますますうるさいだけだ。 俺はゆっくりゃにチュッパチャップスをやる。 「う・・・?・・・チュパチュパ。ううー!あまーいどー♪ぷっでぃ~んだど~♪」 プリン味じゃなくてサイダー味なんだけどな笑 ゆっくりゃが重ちー語になっているのは感情が高ぶっている時だ。こうやって甘いもので大人しくさせて元のうーうー語に治そう。 「うー・・・チュパチュパ・・・あまいぞー☆うっうー☆がおっ!」 とげっぷらしき動作をした。ゆっくりゃはげっぷすらがおーなのか。 「ごめんね、ゆっくりゃ」ナデナデ「うー♪いいど☆」 一思いに肉の塊にしてやりたい所だがゆっくりゃが希少な地域だけに資源の無駄遣いはできない。 ちびちび脅かしてストレス発散に使うか。明日は町でゆっくりゃ用のケージでも買って中に入れてやる。 当分はこのゆっくりゃに色々いたずらしてやろう。食費は俺持ちだけどね。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/716.html
ゆっくりいぢり ゆっくりをからかう ゆっくりれいむがいたので、最近思いついたいたずらをしてみようと思う。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆゆ!? おにーさんゆっくりできるひとなの!? ゆっくりしていってね!!!」 実にゆっくりらしい反応だ。こうでないと今回のいたずらは面白くない。 手に取りたるはタイヤキ、中身はクリームではなく餡子だ。 「ところでれいむ、コレがなんだか知ってるか?」 と、タイヤキを持ってれいむに見せてやる。 「しってるよ!!! とってもあまくてゆっくりできるものだよ!!!」 「じゃあ、コレの中身が何なのかも知ってるな?」 「しってるよ!!! あんこだよ!!!」 「ということはお前の仲間だな? お前は仲間も食べるのか?」 「こんなのれいむのなかまじゃないよ!!!」 「お前の中身は餡子だろう? 仲間じゃないか」 「ゆゆっ!!! じゃあ、タイヤキってれいむのなかまなの!?」 「ああそうだ。お前は仲間を食べてたんだよ。 タイヤキはしゃべれないから痛くてもやめてって言えなかったんだな。 しゃべれないのをいいことにいじめるなんて……おお、こわいこわい」 「ゆゆゆ……だいやぎざん、ごべんな゛ざい゛…… ゆっぐ……ゆっぐ……うわーん!!!」 さて、本格的に泣いたところでネタ晴らしだ。 「うっそぴょーん!!! タイヤキはタイヤキ職人さんが作るお菓子なの!!! はじめっから生き物じゃないんだよ!!!」 「ゆゆ!? おにーさん、れいむのことだましたね!!! ぷんぷん!!!」 「ほら、コレをやるから機嫌直せよ」 といってさっきまで持ってたタイヤキをれいむの目の前においてやる。 「ゆ!! いただきまーす!!! むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」 「ハハハ……こんなんで幸せって、ずいぶん安いもんなんだな」 「ゆゆ!!! れいむやすくないよ!!! ゆるしてほしかったらもっとたいやきちょうだいね!!!」 結局、俺はこの日れいむにタイヤキを5個も食べさせる羽目になったのであった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3239.html
※現代ものです ※かなり無理がある設定だけど気にしない ゆっくりが世にあらわれて数十年経ち、ゆっくりは人々の生活に浸透していた。 愛玩用として、加工食品として、時にはストレス解消用として。 彼らはこの世のものの一部として受け入れられていった。 しかしある日のこと、ゆっくりの加工から研究まで幅広く手がける大手企業に修正不能な問題が発生した。 始まりは社長の汚職事件が発覚したことだった。 この程度ならば、代表たちの記者会見での謝罪と社長辞任で済むはずであった。 しかしそのことがきっかけとなり、その他もろもろのスキャンダルが発覚した。 その中でも痛手だったのは『食品になるゆっくりたちが食べている餌は餓えた豚も食べないようなひどい臭いを放つ劣悪なものである』ということがメディアに知られたことだった。 ゆっくりは栄養や鮮度が悪くてもなんら問題はなく、その餡子も健康に害を及ぼすものにはならない。 このことは科学的にも証明されていることであった。 しかし、一時世間を騒がせていた有害物質を含む食品も餌として使用していたこともばれてしまい、信用を完全に失い、株は紙と化した。 このようなことになり、会社は倒産、研究所は閉鎖、加工場は永久凍結されるのは自然な流れであった。 ゆっくりの一部は他の研究施設に売却されていったがその多くは山へ放たれていった。 加工場や研究所は世界各地にあり、その数は膨大だった。 そして数年後、企業の倒産により、多くの失業者が出たことやゆっくりの不法投棄騒ぎなど世間に騒がれていたが他の話題が出れば、世間は興味をなくし、いつものように人々の記憶から薄れていった。 だが着実に問題は発生していた。 野へ放たれたゆっくりたちは加工場で何世代も過ごしており、野生で生きていくことは不可能だった。 水の危険性、捕食種の恐ろしさ、野生生物の存在、ゆっくりという種族の脆弱さ、全てを忘れていた。 その中で数を減らしながらも経験を経て、やがて野生へと還ることだろう、専門家もそう結論づけていた。 だが、よりゆっくりしたいという浅ましい執念と価値観の違う先住ゆっくりから追い出されることなどを彼らは失念していた。 あるゆっくりは山を降り、人の住む町へと入っていった。 あるゆっくりは恵み豊かではあるが、危険も多い平原へ移り住んだ。 あるゆっくりはもともと住んでいたゆっくりに打ち解け子を増やした。 しかしこれはゆっくりの生活圏が広がり、人と接触知ることが多くなったということでもある。 これにより、各地でゆっくりによる被害が発生した。 もともと自然界のバランスを保っていたゆっくりの数が激増したことにで人以外にも被害が出ることになった。 ゆっくりが家宅に侵入、家財道具が破損した。 ゆっくりに畑をあらされ、収穫できなかった。 ゆっくりが山の資源を食い荒らし、他の生物の個体数が減った。 ゆっくりが大量に溺れて川が汚染されて生物の種類が減り、河の流れ込む海にいたり、海洋汚染にもつながった。 これらは以前から騒がれていたことだがゆっくりが増殖したことにより、目に見えるほどの事態になった。 しかし被害はこれにとどまらなかった。 加工場では繁殖させるため、個体数を増やせるように特殊なゆっくりが使われていたことにより、自然ではありえない速度で増えていき、山は一面ゆっくりだらけになり、他の生物を追い出し、その山は禿山に変わってしまったところもあった。 数が増えていったことにより、ゆっくりは人の生活圏にも侵入し、町のゆっくりも増えていき、 ゆっくりがゴミや死骸を撒き散らすことにより、町にも汚物が溢れることになった。 道路を通行しようとして車に轢かれて、車やバイクがスリップし、交通事故の多発につながった。 研究用として使われたゆっくりには薬物実験にも使われたものもあり、ゆっくりには特に変化がなかったが、餡子の中で変化し、有毒になるものも数多くあった。 渡り鳥が大量死していたり、飼育していた動物が変死したりという事件が起こり、解剖してみるとゆっくりのものと思われる餡子が胃に入っており、その中から人をも死に至らしめる物質も検出された。 このような事件はメディアが放っておくわけもなく、連日報道され、人々は『ゆっくりは人に対して害になる』という考えを抱くようになった。 その流れに乗るようにゆっくりの悪い点ばかりを掲載したような書籍も出版された。 『ゆっくりは総じて人を下であると見ている』 『れいむは愚鈍であり、まりさは薄情、ありすはレイパー、ぱちゅりーは貧弱な愚者である』 『ゆっくりは人類の敵』 このようなことは冷静に見れば何の根拠もない嘘八百であるものばかりであったが、メディアもそれを煽り立てるように報道して、人々はゆっくりに対し悪いイメージを抱いていった。 飼いゆっくりは捨てられ、ゆっくりの加工食品も売上が落ち、月日は流れた。 各国は政府に対し、ゆっくりをどうにかするよう訴えたデモが起こり、加熱していった。 政府も何もしなかったわけではなかったが、駆除しようにも数が多すぎて瞬く間に増えていき、 経費もかさみ、どうにもできなくなっていた。 ゆっくりを捕獲した数に応じて賞金を出す国もあれば、ゆっくりの駆除を義務とした国もあったが思うような成果は得られなかった。 ゆっくりを効率よく駆除できる策や薬品の開発を待つばかりとなった。 ゆっくり対策費用などにより、経済不況が起こり人々は不安な毎日を過ごすようになり、ゆっくりへの憎悪を強めていった。 こうして地上にゆっくりの安住の地はなくなった。 ※※※※※ れいむは分からなかった、どうしてこんなことになってしまったのか。 狭い檻の中、自分のかわいい子供たち、赤れいむ2人赤まりさ1人と一緒に入れられ考えた。 れいむは春に両親ともれいむの間から長女として生まれた。お母さんはとても優しく、2人に 挟まれるととても安心でき、幸せな気分になれた。 みんなで一緒に食べるご飯もおいしく、すくすくと成長した。 長女としてみんなの先頭に立ち、まとめ役としてお母さんの役に立とうとした。 お母さんはそのことをとても褒めてくれて、「れいむが大きくなったらとても いいお母さんになれるね」と言われ、嬉しかった。 季節が過ぎみんな大きくなり、冬が来た。冬の間は狭いおうちの中、みんなで寒くないよう固まっていた。 妹たちはお外で遊びたいと駄々をこねたりしたが、れいむはみんなでくっつきあっているのが好きだった。 お母さんの綺麗なお歌もいつでも聴けたし、穏やかに過ごせた。 一人も欠けることなく春になり、れいむも十分に大きくなって、ついに巣立ちの日を決めた。 お家の前に立ち、みんなに別れの挨拶をした。秋に生まれた妹たちは行かないで大泣きした。 れいむも泣きそうになったがお別れは笑顔でしようとがんばって笑っていたが、今にも泣きそうだった。 お母さんが「辛かったらいつでも戻ってきていいよ」と言ってくれた。 その一言で涙が我慢できなくなった。 今まで育ててくれてありがとう、お母さんみたいにゆっくりしたあかちゃんをうむからね、と みんなにお別れした。 半日ほど跳ねて綺麗なお花さんが咲いている野原についた。 そこではいくつかのゆっくりの家族がお花を食べたり、みんなで歌ったり、 遊んでいたりとみんな楽しそうだった。 家族のことを思い出し、寂しくなったがれいむもお花さんを食べたりした。 日が傾きみんな自分たちのおうちへ帰ろうとしていた。れいむもお家を探そうと森を探索していたとき、1人のまりさと出会った。 ゆっくりしていってね!と挨拶した後、まりさに「何をしているの?」と尋ねられた。 家を探していることを伝えると、「まりさのお家に泊まってっていいよ!」と言ってくれたので 甘えさせてもらうことにした。 次の日も一緒に食べ物を集めたり、ゆっくりしたり、たくさんのことをしてまた泊めてもらった。 そんなゆっくりした日が続き、二人は恋をした。どちらともなく告白し、一緒になることを誓った。 暑い日が続くようになり、ご飯が豊富になってきたころにすっきりをして頭から茎が生えた。 そして3人とも無事に生まれた。茎を食べやすいように噛み砕いてあげた。 「おかぁしゃん、ありがちょぉ♪」赤ちゃんがお礼を言ってくれた。生まれてきてくれてありがとう。 れいむは最高に幸せだったし、これからももっとゆっくりできるだろう。そう信じて疑わなかった。 次の日、まりさは赤ちゃんたちのためにご飯を集めに出掛けた。その間れいむは赤ちゃんたちと す〜りす〜りしたり、お歌を歌ってあげたり、舐めて綺麗にしてあげた。 赤ちゃんたちがおなかがすいたと言い始めた。まりさはそろそろ帰ってくるだろうと待った。 すると、お家を隠している枝や葉っぱがどかされていった。まりさが帰ってきたと思い、ゆっくりしていってね!とお帰りの挨拶をした。だけど見えた顔はまりさじゃなかった。 そして長いものが伸びてきてれいむの頭を掴んだ。痛い、離して、いくらいっても離してくれなかった。 そして外まで引っ張り出された。そして外にいるのは何なのか見た。 れみりゃよりずっと大きく、長い手足がついていた。お母さんから聞いたことがある、 『にんげんさん』だ。 そして、れいむは袋に入れられた。出してと叫んでもだめだった。赤ちゃんたちが何か言っているがうまく聞き取れない。赤ちゃん逃げてと叫んだ。 そのうちくぐもった声になった。きっとれいむのように袋に入れられてしまったんだ。 袋に入れたまま、れいむはどこかへ連れて行かれた。 冷たい檻の中に赤ちゃんたちと一緒に放り出された。赤ちゃんたちは「いちゃぃぃぃぃ」と 泣いていたがぺ〜ろぺ〜ろすると泣き止んだ。 この檻から出られるんだろうか、きっと無理だろう。『にんげんさん』はれみりゃよりずっとずっと怖いとお母さんは言っていた。ここから出れたとしてもまた捕まってしまうだろう。 正直怖くてたまらなかった、今にも泣いてしまいそうだ。けど泣いたら赤ちゃんたちが不安になってしまう。 赤ちゃんにはゆっくりしてほしい。 まりさはどうしているだろう。一生懸命探してくれているかもしれない。助けてほしい、 ここはとてもゆっくりできない。でも助けに来てくれてもまりさも『にんげんさん』には敵わないだろう。 それでも助けに来てくれると思っていないと不安に潰されそうだ。 れいむはもうゆっくりできなくなるだろう。そう思うと楽しかった思い出がよみがえってきた。 お母さんと一緒にいたこと、まりさとのゆっくりした日々、でも二度と叶うことのない夢。 赤ちゃんたちにもゆっくりしてほしかった、楽しいことを何も教えてあげることができなかった。 そう思うと気分が沈んだ。 「おきゃぁしゃん、どぅしちゃにょ?」 暗い顔をしていたのを見られたんだろう、赤ちゃんが聞いてきた。 大丈夫だよと言おうとしたが、ちょっと涙声になってしまった。 「おきゃぁしゃん、どきょきゃぃちゃぃぃちゃぃにゃにょ!?ぺ〜りょぺ〜りょしちぇあげゆきゃりゃ ゆっくちよきゅにゃっちぇにぇ!ぺ〜りょぺ〜りょ♪」 「にゃりゃまりしゃみょ〜♪ぺ〜りょぺ〜りょ♪」 「りぇいみゅみょ〜♪」 ちょっとくすぐったいが、赤ちゃんたちがれいむを励まそうとしてくれているのが分かる。 涙を我慢できなくなった。そして今までにないほどの大声で泣き叫んだ。 それを見た男の感想は「でかい饅頭が泣き叫び、ちっこい饅頭がまわりで気持ち悪い声を出して でかい饅頭を舐めているのは最高にキモい。饅頭は共食いすると言うし、大方腹が減って食おうとしているのだろう。浅ましい奴らだ。」というものだった。 ゆっくり処理場で働く男はさっさと済ませてしまおうと思い、ゆっくりの入った底に キャスターのついた檻を押していった。 れいむが男が近くにいるのに気づき、 「ここからだしてね!」 と言っていたが無視された。 目的の場所に着いて、男は檻を押す手を離し小窓ほどの大きさの鉄の窓を開いた。 そこから目も開けられないほどの熱気が立ち上る。ここはゆっくり焼却炉、ゆっくりを焼却処分するために国が建設した施設であった。 男は檻の上部を開けて赤ゆっくりを捕まえだした。 れいむは赤ゆっくりたちに 「はやくおかあさんのおくちにはいってね!」 と言っていたが男が待つわけもなく、一匹もれいむの口の中に入ることはなかった。 「はなちちぇ〜!」 「おきゃぁしゃん、たしゅけちぇ〜!」 「きゅりゅしぃよ〜!」 赤ゆっくりは男の手の中で悲鳴を上げていたが男は 『ゆっくりは命乞いをするが浅ましい執念で他のゆっくりを身代わりにしてでも生き延びようとする醜い物体である』 とマニュアルに書いてあり、それに従い容赦はしなかった。 そして赤ゆっくり3匹を焼却炉に放り込んだ。 赤ゆっくりは断末魔もなく燃え尽きた。 「でいぶのあがぢゃんがああああぁぁぁぁ!!!」 霊夢は嘆き悲しんでいたが 『ゆっくりは他のゆっくりの死を嘆き悲しむそぶりを見せるが、餌を与えたり、 時間がたてばそのことを綺麗に忘れる』 男はマニュアルを信じ切っていた。れいむに様子を見ても、 これだからゆっくりは嫌いなんだ、と言うことしか思わなかった。 そしてれいむを両手で掴みあげて焼却炉に放り込んだ。 「ゆぎゃあああああぁぁぁぁあづいよおおおおおおぉぉぉぉ!!!」 れいむは思った。どうしてこんな目にあうの?れいむ何も悪いことしてないよ? このままじゃ死んじゃう!助けてまりさ!助けてお母さん! この焼却炉はゆっくりを文字通り“必殺”するために設計されている。 れいむは欠片も残さずに燃え尽き灰になった。 男は次に処分するゆっくりたちを運び込むために、鉄の窓を閉め檻を押しながら離れていった。 実はまりさも少し前に処分されていた。 まりさがご飯を探しているときに捕まり、巣はどこにあるか言わなければ殺すと脅されていた。 最初は抵抗した。しかし、殴られ続けて歯が全部折れ、どうにかしゃべれるような状態になって 白状した。 巣の前まで来るとまりさはまた殴られて、今度はしゃべることもできず、 右目が飛び出した状態にまでされた。そしてれいむや赤ゆっくりたちが入れられた袋とは別の袋に入れられた。 まりさは袋の中でれいむと赤ゆっくりたちが捕まるのを聞いて、心の中で何度も ごめんね、ごめんね、とわび続けた。 れいむと赤ゆっくりが入れられた檻の近くの檻に入れられていた。 しかし薄暗い部屋の中、周りは見えず声だけでしかれいむと赤ゆっくりたちを確認できなかった。 お母さんはここにいるよと言いたかった。でも声が出せなかった。 やがてまりさの檻が運ばれていった。 れいむや赤ちゃんと一緒にいたい、と心で思うことしかできなかった。 そしてまりさは焼却炉に放り込まれた。 痛い、熱い、助けて、どうして、いろんなことが思い浮かんだが声には出せなかった。 まりさは悲鳴を上げることもできず灰になった。 こうしてれいむとまりさ一家は他のゆっくりたちともだが、一緒になることができた。 ちなみにれいむの両親と妹たちも数日前に焼却処分されていたが、灰はすでに書き出されたあとであったため 一緒になることはなかった。 ゆっくりはゆっくりすることが果たしてできるのだろうか あとがき また懲りずにSSを書いてみました。前よりは上達したのかしら。 実は続きも考えてあるんですけど今回はここまでとしました。 続きはまた今度にします。需要あるか知らんけど。 やっぱりゲスよりもこういう無垢なゆっくりを虐めるほうがぞくぞくしますね。 ゆっくりは人間みたいに考えることができるがボキャ貧だから人間に誤解されて ゲスだと認識されたりしているんだと思う。 きっと7,8割は人間に関わることもせず、平和に過ごしているんだと思う。そう思いたい。 まあ何はともあれ、これからもゆっくりを虐めていこう! それでは、また。 こんな駄文を読んで頂きありがとうございました。 書いたSS ゆっくりいじめ系1932 バカは死んでも
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4281.html
※俺設定注意 厨ゆっくり注意 「ゆっくりの強化薬?」 「そう、ゆっくりの強化薬。ひとたび使えばその身体は強靭になり、被捕食種が捕食種を倒すことも容易になる夢の薬さ。 今までの硬化薬やトレーニングに依ることなく、それ単体で効果を発揮する。身体能力、知能向上。防水性の強化。その他諸々。 野良被害に悩まされていた飼いゆっくり達を救うにはうってつけの手段だと思わないかい?」 「それは素晴らしい話だな。ただし、副作用が無ければの話だが。そこん所は一体どうなんだ?」 「あるよ、もちろん。 まず被検体の性格に影響が出た。 非常に凶暴になり、同属の共食いに躊躇しなくなった個体もいる。廃ゆっくりも出た。 薬物の副作用に似ているね」 「駄目じゃねぇか」 「いや、それはあんまり問題が無かったんだ。 やろうと思えばそれに対抗するような鎮静剤みたいなものも作れるしね。ゆっくりだし。 それより厄介なことがあったんだ」 「それより厄介なこと?」 「変質だよ。 精神面でもそうだけど、肉体面でも変化が起こるんだ。 脱毛、変色、膨張は当たり前。 器官の増殖、新生なんてのもあった。 あるれいむは腕が生えて口と目が五つずつになってたよ」 「なんだそりゃ」 「そのれいむはふらん4匹をあっという間に解体したんだけどねぇ。 いかんせん僕達は『変えさせる』事はできても『直す』事はできない。 キミ、キミは自分の飼いゆっくりにそんな薬を与えたいかい?」 「いいや、御免だね。流石に彼女達をバケモノにする趣味は無い」 「そう!かくしてこの強化薬は廃棄、僕たちのプランも白紙になったわけさ! 永遠亭の協力もパァ!今までの苦労も水の泡! 当たり前ながら誰も愛するペットを恐ろしい化け物にする気はないって事だよ!」 「そりゃ、そうだろう。あ、でも虐待用の薬とかとしてなら許可が下りるんじゃないのか?」 「いや、それはもういいんだよ。 僕が作りたかったのは強化薬であって、そういうものじゃない。 まぁ大丈夫さ。次はうまくやるよ。 ・・・ところでさ、その強化薬の件なんだけど・・・・・・」 「何かあるのか?」 「実を言うとね、今ここにその強化薬のサンプルがあるんだ。 廃棄を免れたごく少量の、だけどね。 もし良かったらこれを使って報告をしてくれると嬉しい」 「嫌だよそんなもん。言ったろ、俺は彼女達をバケモノにする気はない」 「いや、そうじゃない。キミの愛するゆっくり達でなくても良いんだ。 キミはゆっくり農園とやらを経営してるだろ?他にもゆっくり養殖場とか。 そういうので良いんだ。適当なゆっくりを捕まえて、適当にサンプルを打ち込んでくれればいい」 「そいつが凶暴になってどんな被害を出すかわからないのに?」 「ああ、そうだ。でもキミなら大丈夫だろう。そう僕は確信している。 いくら凶暴になっても、ゆっくりはゆっくり。人間や、ましてやキミが遅れをとるとは思えない。 ゆっくりの扱いは心得ているだろう?それこそドスであろうと」 「確かにゆっくりの扱いは心得ているが、何故そんなことをしなければならないんだ」 「そりゃあ、次のためさ。 新しい製品を作るには多くのデータがいる。多くのデータを取るには大量のサンプルが要る。サンプルは多ければ多いほど良い。 とりあえずこの強化薬は失敗したが、それを無駄にはしたくない。できれば何故変質したのかを解明したいしね。 万事は試行錯誤。実験の積み重ねだよ」 「・・・・・・仮にその実験に付き合ったとして、その見返りは何だ?」 「特に何も。 ただ、そんなお願いを聞いてくれた優しいキミへ僕・・・いえ、私からの心ばかりのお礼があるだけだ・・・・・・わよ」 「急に女らしくなったりするな気持ち悪い。 ・・・・・・解った。いいぜ、その話乗ってやるよ」 「あぁ、ありがとう。やっぱりキミは良い人だね。頼んだ甲斐があったよ」 「こら、手を握るな。・・・・・・俺も少しは興味があるしな、その薬。適当なので良いんだろう?」 「ああ、勿論。ただし報告は忘れずにしてくれたまえよ。その方がぼ、私も嬉しいしね」 「だからその口調止めろ。何を意識してるんだよ」 「・・・・・・だって『お礼』って言ったら急に引き受けてくれたから。こういうの嫌い?」 「いや、嫌い・・・ではないが。なんか違和感ある」 「ところでお礼は何が良い?やっぱり・・・デ、デート、とか?」 「お前は何を言っているんだ」 ゆっくり鉄輪 ありすは幸せだ。 ありすは生まれついての飼いゆっくりだった。ブリーダーである男の元で生まれ、教育を施され、金バッジを取得した。 男の生活は変わっており、彼はゆっくり農園というものを営んでいた。 それはゆっくりのみで管理された大農園。ありすはそこで働いていた。 先輩であるゆうかや他のゆっくりの助言を頼りに、頑張って畑を耕し、水を遣る。 ありすの生活は充実していた。 そう、ありすの生活は充実していた。 頼りになる先輩達。優しい仲間。そして、最愛の夫。 ありすには伴侶がいる。優しいまりさが。 ありすが成体になって間もなく、散歩の途中、小川に架かる橋の上でそのまりさを見かけたことが始まりだった。 まりさの帽子には飼いゆっくりであると言う証明のバッジがついていない。 それは、このまりさが野生のゆっくりであると言う証拠だった。 ありすは飼いゆっくりだ。もちろん、人間たちの常識、ルールは叩き込まれている。 飼いゆっくりは野生や野良のゆっくりと仲良くするべきではない。そういう風にありすは教育されてきた。 野生と飼いでは常識が違う。飼いが悪とすることでも、野生のゆっくりにとっては正義となることがある。 だからお互いが悪影響となりかねないのだ。 だがありすは、そんなことに頓着することは出来なかった。 そのまりさをはじめて見たその瞬間、ありすに電流が走ったのだ。 少々汚れながらも精悍なその顔。芯の強さがにじみ出てくるその瞳。優しげに微笑むその唇。 ありすの一目惚れだった。 何も考えることが出来なくなり、思わず反射的に声をかけてしまった。 「ゆっくりしていってね!!!」と、その直後に後悔に襲われるありす。 ああ、やってしまった。野生のゆっくりに声をかけるべきではないのに、なにをやってるの、ありすは。 そんな思いに囚われるありす。挨拶すべきではなかったという後悔の念は―――。 「ゆっくりしていってね!!!」 その明るく、優しい声に吹き飛ばされた。 少し話してみると、このまりさがとても優しいゆっくりであることがわかった。 もじもじと恥ずかしがってばかりのありすに、まりさはいつまでも付き合ってくれたのだ。 「ねぇ、ありすはどこからきたの?」 「ありすはとってもきれいだね!」 「ありすはかいゆっくりなの?すごいんだね!」 楽しい時間はすぐに過ぎていった。 まりさがありすに質問し、ありすが答える。そんなぎこちない会話でも、ありすは幸せだった。 「ゆっ!もうおひさまがしずみそうだよ!たのしいじかんはすぐにすぎちゃうね!」 夕暮れになったときに、まりさはそう言った。 ありすもよ。ありすも、とっても楽しかったわ。 そう言おうとしても、満足に口を動かせないありす。 「それじゃあまりさはもうかえるね!ありす、またあしたもゆっくりできる?」 そんなありすに、まりさはまた会おうと言ってくれた。 言葉にならない感動に、ぶんぶんと首を振るありす。 「ゆぅ!よかった!それじゃありす、まりさはあっちのほうにおうちがあるから、もうばいばいだよ!」 そう言いながら森の方へと身体を向けるまりさ。 夕焼けに照らされたその笑顔は、とても温かい。 「あ・・・あの!まりさ!ありす、ありす、とっても、とっても・・・・・・」 別れ際に言おうとするその言葉も、ろくに出てこない。 言わなきゃ。とっても楽しかったって。何でこの口は動かないの。都会派ならちゃんとはっきり言わなくちゃ。 そう思っても身体はまるで金縛りにあったように動かない。ありすは自分に腹立たしくなる。 「まりさもとってもたのしかったよ!ありす、またあしたね!」 まりさは満面の笑顔でそう言ってくれた。 良かった。伝わった。ちゃんとわかってくれた。 まりさに自分の気持ちが伝わったことにありすの胸が熱くなる。 赤く照らされた森にぽよぽよとまりさは跳ねていく。 明日もまた会おう。ありすのカスタードにそのことが深く刻まれる。 ありすはまりさが見えなくなるまで、ずっとその背中を見続けていた。 それからありすとまりさは毎日橋の上で会い、遊んだ。 最初の数日間はぎこちなかったありすも慣れて、照れずにまりさと向き合えるようになった。 やはり数日間一緒に遊んでわかった。 このまりさは優しい。それだけでなく、機知に富み、勇気に溢れていた。 飼いゆっくりを妬む野良や野生のゆっくりは少なくない。 自分の境遇と比べて幸せである飼いゆっくりを嫉み、襲い掛かるゆっくりは後を絶たないのだ。 だがまりさはそんな事とは無縁だった。 飼いゆっくりと野生のゆっくりに隔たりなんか無いとばかりに、ありすに接してくれた。 初めて森の中に入ったありすに、まりさは綺麗な花をプレゼントしてくれた。 甘い香りを放つそれは、まりさが頑張ってとってきたものだと言う。 少し自慢そうに微笑むまりさに、ありすはどんどん惹かれていった。 ありすは飼い主である男にまりさを飼ってくれるよう頼み込んだ。 実際、男は性格の良いゆっくりならスカウトのように農園に迎え入れていたので、ありすには勝算があった。 頼りになる先輩ゆっくりの中にも、野生出身の者は少なくない。 「おねがいします!まりさをかってあげてください!」 「・・・・・・」 男はあまり良い顔をしなかった。 それはそうだろう。いつの間にか野生のゆっくりと親密になり、そして農園に入れてやってくれと頼み込まれたのだから。 元々彼は放任主義だったが、今回は少し頭を悩めた。 「まりさはいいゆっくりなんです!きっとおにいさんもきにいりますから!」 「・・・・・・そのまりさはここに居ないようだが?」 ありすはとりあえず飼い主の了解を得ることから先に始めた。 とにかくお兄さんの了解を得ないことには始まらない。先にまりさを連れてきてお兄さんを怒らせたらことだ。 ゆっくりにしてはそこそこ頭を働かせてありすはこの計画を立てたのだ。 「おにいさんがゆるしてくれたらつれてきます!だからおにいさん、おねがいします!」 「・・・・・・珍しいな、ありすがそこまで強情になるなんて」 男にとっては意外だった。 普段はおしとやかと言っても差し支えないほどに大人しいありすが、ここまで強情になるだなんて。 今まで彼に逆らったことなど数えるしかないありすがここまで入れ込むまりさに、興味をもったのも事実だった。 「・・・・・・そこまで言うんならしょうがない。いいよ、ありす」 「ゆっ!?ほんとう!?」 反対する理由などあまり無いのも確かだ。 本当に善良なまりさならありすの眼に狂いは無かったと言うことになるし、違うのならば潰せばよいことだ。 そんな軽い気持ちで男はありすに許可を出した。 「おにいさん、ありがとう!ありす、まりさをせっとくしてきます!」 言うや否や、ありすは森へと跳ねていった。 もしまりさがうんと言ってくれたなら、ありすとまりさは同じゆ舎の中で暮らすことになるだろう。 そうすれば、もしかしたら、ありすと一緒に・・・・・・結婚・・・・・・。 湧き上がるその思いを抑えきれずに、ありすは真っ赤になりながら森へと向かっていく。 「まりさ!まりさ、あ、あの、その・・・・・・」 「ゆ?なぁに、ありす?」 いつもの待ち合わせ場所である橋の上で、ありすはそう切り出した。 また口が満足に開かない。どうなっているんだ。 ありすは最初にまりさに出会った頃を思い出しながらも必死に続ける。 「あの、その、えっとね!お、おにいさんに、きょかをもらってきたの・・・・・・」 「ゆ?」 その突飛な申し出にまりさは思わず首をひねる。 いきなりこれでは訳が分からないでしょ、この田舎者。 そう自分に毒づきつつ、しどろもどろになりながらも必死に言葉を紡ぐありす。 「え、えっと、まりさ!まりさはかいゆっくりになりたくない?」 「ゆっ!?かいゆっくり!?」 きらきらと目を輝かせるまりさ。 当然だろう。飼いゆっくりになれば少なくとも野生よりは安全に生きられる。できる事ならそうなりたいのも確かだ。 まりさにとってもその魅力は大きかったようだ。 「もしかして、まりさはかいゆっくりになれるの!?」 「そ、そうよ!まりさはかいゆっくりになるのよ!」 問いかけるまりさに、答えるありす。 やった。確かな手応えに、ありすは歓喜する。 これで、まりさと一緒に暮らせる。 「ゆっ・・・・・・ゆわーい!!!やったー!!!」 よほど嬉しかったのだろう。飛び跳ねるまりさ。 その姿を見てありすもまた嬉しくなる。 こんなに喜んでくれるだなんて。本当によかった。 そう思うと、胸の奥からこみ上げてくるものがある。 「まっ・・・・・・まりさ!!」 「ゆ!?なぁに、ありす!?」 飛び跳ねるまりさに、思わす声をかける。 言ってしまおう。この想いをぶちまけてしまおう。 今なら恐れずに言える、そんな気がする。 「あ、ありすは!!ありすはまりさのことがすき!!すきなの!!だいすき!!! だ、だから、いっしょに、いっしょにずっとゆっくりしてほしいの!!」 真っ赤になりながら一気にまくし立てるありす。 言ってしまった。もう後戻りは出来ない。 このプロポーズをまりさは受けてくれるか、どうか。 「ありす・・・・・・まりさは・・・・・・」 はたと立ち止まり、ありすに向かってポツリと呟くまりさ。 まりさの答えを待ち望み、まりさを見つめるありす。 「まりさも、ありすのことがだいすきだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!!」 最初に出会ったときのような満面の笑顔で、まりさはそう言ってくれた。 嬉しい。 思わずありすの頬に、一筋の涙が伝う。 「ま、まりさっ!」 「ありす!」 お互いに駆け寄り、身体を擦りつけあう。 それは友情ではなく、夫婦となったゆっくりに許される愛情のすりすり。 今ここに2匹は番となった。 それからありすはまりさをゆっくり農園に連れて帰った。 夫となったまりさを皆に紹介する。帰ってきたのは驚きの声と、祝福だった。 まさかありすがこんなに早くお相手を見つけてくるとは思わなかった。 そのまりさは野生のゆっくり?ありす、大人しいと思ってたのに大胆だねぇ。 そうだ、ありすのけっこん祝いになにかしてあげられないかな。 それはいいね。何がいいだろう。 おめでとう、ありす。 そんな皆の優しい祝福に、またありすは泣いてしまう。 どうしかたのかとおろおろし始める周囲に、ありすは微笑みながらも言った。 「ちがうの。ありす、とってもしあわせで、うれしくて、それでないちゃったの」 それから、ほんのちょっとだけありすの生活は変化した。 いくらスカウトされた善良なゆっくりと言えど、人間たちの常識に慣れるには時間が必要だ。 いきなり最初から農場で働かせるわけにもいかない。そのまま遊ばせておくなど論外である。 だから、男はそんなゆっくりのためにもう一つ農場を用意していた。 いや、正確に言うならそうではない。ただ単にあぶれ者の収容所というだけだ。 野外農場。 それだけならば聞こえは良いが実際は単なる奴隷農園だった。 人里に侵入を図った野生のゆっくりなどを捕まえ、そこで働かせる。 言うことを聞かなければ鞭が飛び、逃げようとすれば監督官であるふらんたちに食われる。 スカウトされたゆっくりとて少々大目には見るものの基本的に扱いは変わらない。 ありすはそんな野外農場で働くことになった。 夫のまりさがそこに行くのだ。付いて行かない理由などどこにも無い。 今まで培ったお野菜の栽培法を活かせば、恐ろしいことなんて何一つ無いはずである。 実際、ありすはそこで上手くやった。 言われるままに動くしかない他のゆっくりと違って、ありすには知識がある。ヘマをするようなことは無かった。 事情を知っているふらんたちも、わざわざ金バッジであるありすに目くじらを立てることは無かった。 ありすの夫であるまりさも同様に見逃されていたようである。 昼は悲鳴を上げる奴隷ゆっくりを他所にまりさに農耕を教え、夜には寄り添いあいながら眠る。 まりさもありすの教えを良く飲み込み、早くも農場で頭角を現し始めている。 逆恨みしてくる他の奴隷ゆっくりからは、ふらんたちが守ってくれた。 時々視察に来た先輩ゆっくりたちも、ありすに優しくしてくれる。 そう、ありすの生活は充実していた。 少し場所は変わったが、やる事に何一つ変わりは無い。 頼りになる先輩達。優しいふらんたち。そして、最愛の夫。 ありすには伴侶がいる。優しいまりさが。 そして。 そして―――子供が出来た。 ありすとまりさの愛の結晶。 今このお腹の中に、その命の息吹を感じ取れる。 ありすは胎生にんっしんっをしていた。 男の見立てによると、約一ヶ月で生まれてくるそうだ。 ゆっくりの妊娠期間は千差万別だ。 早ければ数分から、遅ければそれこそ人間とほぼ同じ時間ほどかかる個体もいる。 ありす自身も胎生にんっしんっで生まれたゆっくりだった。 そのときにかかった期間が一ヶ月。ならば今回もそれとほぼ同じ時間がかかるだろう。 それが男の考えだった。 わずかに膨らんだように見えるお腹を見て微笑む二匹。 どんな子が産まれるのだろう? ありすに似た子かな?それともまりさだろうか。 二人の愛に包まれて、この子は祝福されながら産まれてくるのだろう。ありすは思わず頬が緩んでしまう。 ゆっくりとして生きられるうちの最高の幸せ。 それを受けていると言ってもいいほどにありすは幸せだった。 これからはどんな困難もふたりで、いや、おちびちゃんとも一緒に超えていけるだろう。 そう、だからありすは幸せだ。 「ありす、まりさはありすのえいようのためにおいしいものをとってくるよ!」 「ゆ?まりさ?」 ありすがにんっしんっして一週間後、唐突にまりさはありすにそう言った。 身重となったありすは農場で働けなくなった。 その代わりとでも言うように、まりさはありすの分まで頑張っているとふらんから聞かされている。 更にまりさはありすの栄養のために、わざわざ森へ行って食べ物を持ってきてあげると言い出したのだ。 嬉しい。 迷惑をかけているのに、そんなことも気にせずにまりさはありすのことを案じてくれている。 この心遣いがとても嬉しい。でも――― 「ゆっ、いいわよ、まりさ。そんなにがんばらなくても」 申し訳なく、思う。 もうこれ以上の負担を負う必要はない。そんなに頑張らなくても誰もまりさを責めたりしないのに。 「だいじょうぶだよ!まりさはありすのためならへっちゃらだよ!」 そう笑うまりさの顔には、確かに疲れがにじみ出ている。 ありすの分も連日働き続け、まりさが疲労しているのは明らかだ。 それでもまりさはありすのために何かしたいのだと言う。 やっぱりまりさは優しいな。 ありすの胸が熱くなる。 「でも、まりさ・・・。まりさ、つかれてるじゃない。いいからきょうはやすんで・・・・・・」 「ありすはがんばってあかちゃんをうもうとしているときに、まりさだけやすめないよ!」 二匹の主張は平行線。 延々とお互いのことを案じ、助けようとしている。 「ゆぅっ!ありすはもっとゆっくりしてね!まりさはありすのためにごはんをとってくるんだよ!!」 「わ、わかったわよ、まりさ・・・・・・」 結局、ありすが折れた。 元々ありすは大人しく折れやすかったのだが、それに加えてまりさがここまで強情になるのも初めてだった。 こんなにありすのことを案じてくれているだなんて。 まりさの優しさに胸を打たれる。 「まっててね、ありす!まりさ、のいちごさんとか、はちみつさんとかたくさんとってきてあげるからね!」 「う・・・うん!まりさ、きたいしてまってるわね!」 ここまで意気込んでくれているのだ。もう応援して送り出してしまおう。その方がきっとまりさも嬉しい。 ありすはそう考え、まりさに満面の笑顔を向ける。 「じゃあ、いってくるね!・・・と、そのまえに・・・・・・」 「ゆ?・・・ゆゆ・・・♪」 まりさがありすに寄り添い、ほっぺたをくっつける。 すりすりと柔らかい感触。二匹の愛情に満ちたすりすり。 いってらっしゃいのキスと言わんばかりに、二匹は愛情をこめてお互いに擦り寄る。 「それじゃあ、こんどこそいってきます、ありす!」 「わかったわ、まりさ!がんばってね!」 お互いに満面の笑み。 行ってきますと森に向かうまりさに、行ってらっしゃいと見送るありす。 心なしかお腹の赤ちゃんも嬉しそうに震えているような気がする。 まだ一週間目だが、それでももう赤ちゃんの形くらいは出来ているはずだ。 きっと愛情たっぷりな夫婦のやり取りを感じて嬉しくなったのだろう。 お腹の中の赤ちゃんの感触と、まりさの優しさにありすは微笑む。 あと3週間ほどで、ありすたちは親子になるんだ。その光景を思い描くたびに頬が緩む。 こんなに幸せでいいんだろうか。ありすはそう思うほどに幸福だった。 森に向かうまりさのその姿が見えなくなるまで、ありすはずっとまりさを見送っていた。 しかし、その後ありすの元にまりさが帰ってくることは無かった。 ありすは泣いた。 泣いて、泣いて、泣き続けた。 一体まりさの身に何が起こった? もしかしたら、れみりゃに襲われて死んでしまったのかもしれない。 もしかしたら、何か事故にあって死んでしまったのかもしれない。 もしかしたら、もしかしたら・・・・・・ ありすの頭の中にあらゆる可能性が駆け巡り、それがまたありすを悲しみに突き落とす。 もうまりさはこの世にはいないのかもしれない。でも、それでも。 それでも、まりさが死んでしまったなどとありすは信じたくは無かった。 きっと生きているはずだ。今もどこかで、きっとありすの元に帰ろうとしているはず。 可能性は低い。だけどその可能性に縋り続けたかった。 今、ふらんや他の空を飛べるゆっくりがまりさの捜索に当たってくれている。 身重のありすにはそれを眺め、待つことしかできなかった。 ありすにはそれが悔しい。 にんっしんっさえしていなかったら、ありすは真っ先にまりさを探し出すだろう。 赤ちゃんが悪いと言うわけではないが、それでも・・・・・・歯がゆく感じてしまう。 赤ちゃんが動いた。 まるで母親を慰めるように。 それに気付いたありすは、赤ちゃんに小さく謝った。 ごめんね。 赤ちゃんのせいなんかじゃないんだもんね。 大丈夫よ。 あなたは安心して、生まれてくることだけを考えればいいのよ。 ねぇ、まりさ。 早く帰ってきて。お願いだから。 今、農場はあなたを探すために大変なの。 みんなが一生懸命まりさの事を探してくれているの。 栄養の付く食べ物なんていらないから。 ありすにはまりさが、あなただけがいればそれでいいの。 お腹の中の赤ちゃんもまりさのことを待っているの。 ねぇ、お願い。 早く帰ってきて。今すぐ帰ってきて。 そうじゃないと・・・・・・悲しくて、悲しくて、泣いてしまうから。 ねぇ、まりさ。 ありすは待った。 泣いて、泣いて、それでも待ち続けたのだ。まりさの帰りを。 あるはずの無い、夫の帰りを。 胎内の赤ちゃんは、少しずつ、大きくなり始めていた。 それから一週間後。 まりさが見つかった。 正確には、まりさを見つけたとふらんが報告してくれたのだ。 まりさは森の中にいる、とだけふらんは教えてくれた。 その言葉を聴いた途端、ありすは走り出していた。 目指すはまりさのいる森の中。 既にお腹は大きく膨れ、移動することすらおぼつかない有様だ。 だがそれでもありすは一生懸命跳ね、森へと向かっていく。 まりさに会いたい。その一心でありすは跳ね続けている。 沢山待った。とても長い間、ひたすら待ったのだ。 まりさの居ない朝ををすごし、一緒にとるはずだった昼食をひとりで食べ、夜は寂しく眠る。 そんな生活を、一週間も続けていた。 ゆっくりにとって一週間とは、短い時間ではない。 妊娠しているありすにとって、この一週間は何年、いや、それ以上の長さに感じたことだろう。 今はお腹の赤ちゃんのことも頭に無く、ひたすら身体を動かし、跳ねる。 まりさは既に死んでしまっているかもしれないと思ったこともあった。 でも、生きていた。生きていてくれたのだ。これほど嬉しいことがあろうか。 待っててまりさ。 今、ありすが行くからね。だからちょっと待ってて。 ほら、こんなにお腹も大きくなったんだよ。まりさとの赤ちゃんだよ。もうすぐ生まれそうだよ。 ありすは跳ねていく。 その瞳に愛しのまりさを映しだそうと森の中へと入ってゆく。 失くしかけた幸せ。失いかけた夫。それを取り戻さんと、ありすは森を駆けていった。 「ゆっくりかえったんだぜ、れいむ!」 「ゆぅ~ん!おかえり、まりさ!」 ありすは立ち尽くす。 木の陰に隠れ、遠く離れた2匹の饅頭をひたすらに見続ける。 「おまたせなんだぜれいむ!きょうのごはんはこんなにあるんだぜ!」 「ゆうぅ!すごいよぉまりさぁ!」 帽子を脱ぎそこに溜め込まれた木の実や虫を取り出していくまりさ。 そしてそれを見て感動するれいむ。 ありすは今何が起こっているのか理解できなかった。 今、ありすが見つめ続けているのは確かに自分の夫であるはずのまりさだ。それはわかる。 あのお帽子、あのきれいな髪。ありすがまりさを見間違えるはずは無い。 じゃあ、まりさの傍にいるあのれいむは一体何者だ? 見ればれいむの額には茎が生え、そこには5つの赤ん坊が眠りながら繋がれている。 れいむが3に、まりさが2。もうすぐ生まれ落ちそうなほどに良く育っている。 いや、そんなことはどうでもいい。一体何故、そのれいむにまりさの赤ちゃんが実っているのだ。 「やっぱりまりさはすごいね!れいむはこんなにたくさんのごはんみたことないよ!」 「ふん!こんなのかんたんなのぜ!まりささまはもっとつらいところにいたからこんなのらくしょうなのぜ!」 れいむの賞賛に、胸を張りながら答えるまりさ。 ありすにはまりさたちの会話が理解できない。目を開き、見つめ続けるだけだ。 「まりささまはむかしにんげんにつかまって、そこでじごくのようなろうどうをさせられていたのぜ!」 「ゆぅ!こわいよぉまりさぁ!」 まりさは軽薄な笑みを浮かべ、そう話し始めた。 ありすの知るまりさとはかけ離れた表情。少なくとも、ありすはこんなまりさを知らない。 「そこではまいにちまいにちつちをほったりみずをばらまいたりして、おやさいをつくらされていたんだぜ!」 「ゆぅ!?なにそれぇ!?」 「まったくだぜ!!おやさいはかってにはえてくるのに、まったくむだなろうどうだったんだぜ!!」 一体何を言っているのだ? お野菜さんは沢山世話をして、それでようやく収穫できるものだ。勝手に生えるなどありはしない。 まりさにそう教えたときはわかったと言ってくれたはずなのに。 「あるときまりささまはいやになってそこをとびだし、にげだしたんだぜ!!」 「ゆっ!だいじょうぶだったのまりさぁ!?」 「おそいかかるふらんやれみりゃをあいてに、なんとかまりさはこのもりまでにげのびてきたのぜ!!」 「ゆーっ!!すごーい!!」 違う。違う違う違う。 まりさはありすのために。栄養のある食べ物をとってきてくれるって。そう言ってくれたはずなのに。 そうやって、ありすがまりさを見送ったはずなのに。 「そこでまりささまはもりいちばんのきれいなれいむにであい、そしてふうふとなったってわけなんだぜ!!」 「ゆぅ・・・!はずかしいよぉまりさぁ・・・!」 思い返せば、まりさのことを教えてくれたふらんの表情は暗かった。 きっとこの事を知って、迷いに迷ったうえでありすに告げることを選んだのだろう。 何故ふらんの態度を疑問に思わなかったのか?それはありすがまりさのことだけを考えていたからだ。 こんなことが待ち構えているとは思いもしないで。 このまりさは飼いゆっくりになりたかった。 危険の無い生活。十分な量の食事。夜れみりゃにおびえる事も、突然の雨も心配することは無い。 同じ群れに暮らしていたぱちゅりーの話は、まりさの記憶の奥底に深く刻まれた。 そしてそんな夢を見ながら暮らしていたある日、ありすと出会った。 清潔な髪の毛。栄養をたっぷりとっていそうな肌。見るからに飼いゆっくりであるとわかった。 そこでまりさは、ある考えを思いつく。 このありすと夫婦になって、飼いゆっくりになってしまおう。 そうと決まれば話は早かった。 まりさはありすにモーションをかけ続け、ありすに惚れさせることに成功した。 もともと初心な飼いゆっくりのありすには、プレイボーイであるまりさにめろめろになるのも時間の問題だった。 そうしてまりさはありすと結婚し、飼いゆっくりとなるはずだった。 ところがどうだ。待っていたのはゆっくりとした生活ではなく、地獄のような労働の日々。 まりさにとっては寝耳に水どころではない。 聞いていた筈の生活などどこにも無く、毎日毎日意味の無い労働ばかり。 それがまりさを幻滅させるのにそう時間はかからなかった。 いや、むしろ一週間以上も良く持ったほうだということか。 そうとなればこんな場所に用は無かった。妻であるありすのことも最早どうでもいい。 すっきりしようと思えばいくらでも相手はいるし、この生活のお陰で身体も鍛えられた。 そしてある日まりさはありすのために食べ物をとってくると嘘をつき、農場を後にした。 まりさの演技力は抜群で、誰もが妻のために奔走する姿にしか見えなかっただろう。 勿論まりさはそんな気など毛頭ない。ただ森へと逃げ帰る事しか頭に無かった。 結局は、ありすはまりさに体よく利用されただけに過ぎなかった。 飼いゆっくりに憧れて幸運にもありすを孕まし、そして理想と違ったから逃げ出した。 ただそれだけに過ぎない。 だがそんなことをありすは知らない。 ただ何故と呟き、その場からあとずさるだけだ。 気付けばその双眸からは涙がとめどなくあふれ出てきている。 「ゆぅ~ん、れいむ、なんだかおそらがくらくなってきたのぜ」 「ゆっ!そうだねまりさ!もうすぐあめさんがふってくるかもしれないから、おうちにかえろうね!」 そうして2匹は巣の中へと戻っていく。 頭の先についた赤子をかばうようにそっと動くれいむを、まりさは支えている。 その姿はお互いを愛し合う夫婦のようだった。 嘘だ。 まりさはありすの夫で、そこにいるれいむの夫なんかじゃあない。 理解しきれない現実。理解したくない事実からありすは必死に目をそらそうとする。 だができない。ありすの視線は2匹を中心に収めたまま動かない。 開かれた瞳からは、更に涙があふれ出ている。 嘘だ。 あのまりさは本当のまりさじゃない。きっと偽者。そうだ。別の誰かがまりさの帽子を被っているんだ―――違う。 見間違えるはずも無い。あの顔、あの瞳、あの声、あの仕草。全てがまりさのものだ。帽子なんかは関係無く、判る。 つまりはあのまりさはありすが愛したまりさと同一人物。その事実がありすを一層苛む。 既に涙で視界はぼやけ、2匹が巣に入る瞬間は見えなかった。 嘘だ。 一体何が嘘なんだ?今見た光景がか?まりさと夫婦になったと言う事実か?それとも―――いま生きている、この世界のことか? 全ては現実。ありすが見たものも、ありすが今までにしてきたことも、ありすを取り巻く全ては現実のものだ。 それが耐えられない。それを理解したくない。ありすは声にならない絶叫をあげる。 嘘だったのだ。 まりさがありすを愛していたことは。ありすが思い描いていた幸せの日々は。 まるで足場が崩れ落ちるような感覚をありすは味わっていた。 この落下感にも似た感覚を、人は絶望と呼ぶ。 もうここにいたくない。 壊れかけた心がそう叫ぶ。もう一分一秒とて、この場所にいたくない。 もつれるように背を向け、ここから走り出す。少しずつ離れていく光景。 涙で濡れたその顔に、また一滴雫が落ちる。 それは、空から降ってきたものだった。 雨が、降り始めていた。 ―――ゆっくり鉄輪・後へ このSSに感想をつける